丘珠空港滑走路延伸について

札幌市は平成28年から市民アンケート、識者による検討会議、市民ワークショップ、市民説明会、地域住民説明会にて丘珠空港の利活用を検討し、丘珠空港の滑走路延伸を計画してきましたが、2023年7月下旬に、滑走路延伸の供用開始は2030年を目指すことを明らかにし、国に要望書を提出しました。

丘珠空港(札幌飛行場)

丘珠空港の滑走路延伸についての経緯は、札幌市のページにまとめられています。

丘珠空港の利活用検討
https://www.city.sapporo.jp/shimin/okadama/rikatsuyo/rikatsuyokento.html

これまでの丘珠空港の動きをふりかえりながら、気になる部分を考えてみます。

丘珠空港のふりかえり

滑走路の変遷

あまり知られていませんが、丘珠空港の正式名称は札幌飛行場であり、昭和19年まで札幌飛行場は北24条西8丁目付近にありました。

昭和17年に現在の位置に新飛行場の建設がはじまり、昭和19年に完全移転しています。

滑走路の変遷

昭和19年の移転当初の滑走路長は1000m、昭和31年の旅客機運行に合わせて1200m、昭和42年に1400m、平成16年に1500mと滑走路が少しずつ延伸されてきました。

YS-11退役によるジェット化検討

平成4年、丘珠空港に就航していた国産旅客機YS-11の退役により、滑走路を2000mに延伸してB737-500ジェット機を導入する検討が進められましたが、平成8年に住民の反対や、新千歳空港との役割分担などから、ジェット機ではなくプロペラ機での運用を継続する方針が決定し、滑走路を1500mへ延伸、滑走路幅を45mへ拡幅する方針が決定されました。

丘珠空港緑地公園の造成

平成11年に入ると「丘珠空港周辺のまちづくり構想」を策定し、丘珠空港周辺の約55haを買収して、丘珠空港緑地公園を整備することが発表されました。

丘珠空港緑地公園

この丘珠空港緑地公園については構想発表当初から、将来的に滑走路を2000mに延伸する際の空港用地として噂されていました。

丘珠空港緑地公園は滑走路の北西、北、南東に広がる公園で、大型遊具、展望ステージ、ラニングコース、ノルディックコース、18ホールのパークゴルフ場など整備されています。

人工の丘(築山)から丘珠空港のエプロンを望む

広場には約4mの人工の丘(築山)が整備されており、南西側の公園からは丘珠空港のエプロンを間近に望むことができます。

平成15年には丘珠空港の滑走路の1500mへの延伸、滑走路幅の45mへの拡幅、エプロンの拡張が完成します。

ANAの丘珠路線の撤退

平成21年、ANA(A-net)は丘珠空港に就航する5路線すべてを新千歳空港に移転することを発表し、道や札幌をと協議を始めましたが、ANAが選定したボンバルディア社DHC8-Q400を導入する場合、冬季間の安全な離着陸のためには、滑走路長を1500mから更に延伸が必要とのことで、平成22年にANAが丘珠空港から完全撤退しました。

HACの拠点空港化

平成22年にHAC(日本航空グループの北海道エアシステム)が丘珠空港を拠点空港とすることを発表し、全路線を丘珠空港に集約し、格納庫の新設を行いました。

駐機するHAC機

FDAジェット機の季節就航

平成24年になると、FDA(フジドリームエアラインズ)のジェット機(エンブラエル社ERJ170)による丘珠就航を打診し、試験フライトやチャーター便による実証飛行を実施、平成26年から年間13往復のチャーター便を運行、平成28年には定期便として就航となりました。

駐機するFDA機

しかし、1500mの滑走路では冬季間は運行はできず、夏場においても、いわゆるロケットスタートによる離陸を行っています。

TOKの新規就航

令和5年、新潟の新しいリージョナル航空会社であるトキエアが丘珠-新潟線の定期便就航が決定しました。

丘珠空港に駐機するTOK機(試験フライト)

トキエアラインは2022年度中の就航を予定していましたが、準備に時間がかかっており、2023年9月の試験フライトを実施しています。

HAC新規路線の就航

平成5年10月に丘珠-秋田線、丘珠-中標津便線が就航しました。秋田便はJAL新千歳-秋田便からの移管、丘珠-中標津はANAが新千歳-中標津線を運行するなかでの丘珠便の開設となります。

丘珠空港に就航している機材

現在の丘珠空港に就航している機材はHACとTOKがプロペラ機のATR42-600、FDAがジェット機のERJ-175を使用されています。

機体の大きさと座席数をまとめておきます。

丘珠空港に就航している機材の諸元

プロペラ機であるATR42-600はジェット機のERJ-175よりも明らかに小さい機体ですが、ERJ-175はLCCでよく使用される機材A320neoと比べて小さい機体であり座席数も大幅に少ないことがわかります。

※座席数や最短離陸滑走路長は諸条件で違いがありますので参考として考えてください。
※最短離陸滑走路長は公表値です。
※日本においては国土交通省から原則◯◯◯◯メートルの滑走路長の確保が決められています。

滑走路延伸の課題や期待すること

①空港用地に転用される丘珠空港緑地公園の対策

丘珠空港の滑走路を2000mへ延伸するための用地でもある丘珠空港緑地公園ですが、現在ではすっかり市民の憩いの場となっており、すぐ近くに滑走路があることから、着陸する飛行機が頭のすぐ上を飛行するため、小さな子供らに人気の場所となっています。

丘珠空港に着陸するFDA機

現在の滑走路延伸計画では北西側に200m、南東側に100m延伸する案が有力となっており、公開された想定図によると、篠路通の一部が空港用地と重なり、丘珠空港緑地の多くを空港用地に転用する必要があります。

1800m延伸想定図(出典:札幌市-丘珠空港の利活用検討)

また、検討会が発表した資料によると、滑走路北側に小型航空機用のエプロン整備、防災ヘリ・MW用エプロン等整備とあり、丘珠空港緑地が東西に分断される可能性があることが分かりました。

丘珠空港活用案(丘珠空港の利活用に関する検討会議報告書をベースに作成)

丘珠緑地公園の一部を空港用地に転用するのは仕方ありませんが、市民に定着した公園ですので、新たに用地買収して現在と同じ体験をできるようにすることが重要と思われます。

②ボーディングブリッジの検討

丘珠空港のエプロンは5バースありますが、ボーディングブリッジ(搭乗橋)は整備されていません。そのため、飛行機に搭乗するには、空港ターミナルビル2階の保安検査場から1階へ降り、冬季間もエプロンを歩いて飛行機に搭乗しなければなりません。

検討会の資料によると、ボーディングブリッジの整備検討と記されていますが、現在の丘珠空港にはHACやTOKがATR42-600、季節就航のFDAがERJ-175が就航しています。

ATR42-600機とERJ-175機

ATR42-600は乗降口が機体後方の地上から約1.3mの高さのにありますが、丘珠空港ではボーディングスロープも接続せず、エプロンから直接機体ドアと一体化した階段を使って搭乗します。

後方乗降口から搭乗する乗客

ERJ-175の乗降口は機体前方の地上から約2.8mの位置にあるため、タラップ(舷梯)を接続してエプロンから機内へ搭乗します。

FDA機に接続するタラップ

ERJ-175には一般的なボーディングブリッジの接続が可能だと思われますが、ATR42-600は乗降口の地上高が約1.3mと低いため、両方に接続可能なボーディングブリッジ存在するのか気になるところです。

近年他空港でも導入が進むエプロンルーフも候補に上がるかもしれませんが、丘珠空港は市内でも積雪が多い地区であり、また北西の風が強い地区なのでエプロンルーフは不向きかもしれません。

③ターミナルビル施設の拡充

現在の丘珠空港の年間利用者は約32万人ですが、現行の空港ターミナルビルが手狭になっており、朝夕チェックインカウンターはとても混雑しています。

ターミナルビル1Fのチェックインカウンター

丘珠空港のエプロンは旅客機5バース(+小型機22バース)ありますが、ターミナルビルの保安検査場のレーンは1つしかなく、時間帯によってはとても混雑します。

ターミナルビル2Fの保安検査場入口

現在の丘珠空港ターミナルは延べ床面積が約3,500㎡程度の小さいターミナルビルですが、2Fにはレストランや売店があります。

ターミナルビル2Fのレストラン
ターミナルビル2Fにある売店

丘珠空港の滑走路延伸により、1日の発着便は現在の2倍である70便、利用者数は3倍の年間100万人となる見込まれています。

さらに、道外の空港を結ぶ路線が増やす方針であることから、北海道の美味しい食材を提供するレストランや、北海道土産を販売する売店も大幅に拡充すべきであり、空港ターミナルビルを全体を拡張する必要があると考えます。

現在の丘珠空港の年間利用者約32万人ですが、新規路線の就航があった令和5年度は40万人を超えると予想されています。

滑走路延伸後の空港ターミナルはどの程度の規模が妥当なのか、他の空港ターミナルを調べてみました。ちなみに、国際線がある空港や貨物ターミナルを含む空港もあるので参考として考えてください。

■現在の丘珠空港

■年間利用者が約30万人の空港

丘珠空港の年間利用者に近い空港を調べると、佐賀空港の約34万人、山形空港の約30万人が該当します。驚くことに、年間発着数に関しては(丘珠空港は小型機中心ではあるものの)両空港の2倍以上であることがわかりました。

■年間利用者が約100万人の空港

丘珠空港の滑走路延伸後の年間利用者は約100万人と想定されていますが、その100万人に近いの空港を調べてみると、青森空港が約98万人、小松空港の約114万人が該当しました。

これら結果から、滑走路延伸後の丘珠空港ターミナルの規模を想定すると、約8,000~9,000㎡程度が妥当ではないかと考えます。

北海道新幹線が札幌まで開通すると、直行便で道内空港に入国した外国人観光客が丘珠空港を経由して新幹線で道南や本州へ向かうコースも登場すると予想されますので、国際線の就航がなくても外国人観光客が大勢利用する可能性があるかもしれません。

④二次交通の問題

丘珠空港活用検討会の資料では地下鉄延伸や新交通システムも検討候補にありましたか、大方の予想どおり最終案では地下鉄延伸、新交通システムの検討は先送りになりました。

地下鉄と空港ターミナルの連絡(仮定)

地下鉄に関して、栄町駅は現空港ターミナルよりも南側に位置しており、留置線や検車線を考えると大きくUターンするする必要があり、約2.6km(約3駅分)の延伸が必要となってしまいます。仮に1つ手前の新道東駅から支線を建設するなら、約1.4km(約1駅分)の延伸で済むことになります。

地下鉄延伸、新交通システムの検討先送りにより、2次交通については現行通り栄町駅行き、札幌駅行きの空港連絡バスにが中心に議論されていきそうです。

丘珠駐屯地の位置

ただ、この検討先送りについては、空港ターミナルの場所を丘珠駐屯地付近に移転する可能性も含まれていることを期待しています。

現在の丘珠駐屯地に移転した場合、栄町駅から最短で約700m(徒歩6~8分)程度となるので、動く歩道を整備した地下通路を建設して地下鉄駅と空港ターミナルを直結することも不可能ではないと思われます。

もし、空港ターミナル位置が現在の位置から変わらない場合、二次交通となる空港連絡バスを安定して運行させるために、高速道路と空港ターミナル直結を検討する必要があるのではないでしょうか。

高速道路との直結イメージ

現在、札幌では都心アクセス道として、札幌駅-札幌新道区間を結ぶ大半が地下トンネルの自動車道を整備しており、都心方面は高速道路とダイレクトアクセスが可能になります。

丘珠空港の最寄りに伏古ICがありますが、千歳方面への入口と都心方面への出口しかないため、せっかく整備している都心アクセス道を活かすことができません。

札樽自動車道から丘珠空港ターミナルまで全長約850mの丘珠空港線を新設することで、空港連絡バスの定時性確保と時間短縮を実現することができると共に、丘珠空港周囲の幹線道路の混雑防止になると思われます。

直結路線の新設が難しい場合でも、伏古ICをフルICへの改修および、幅員が50m~65mありながら片側2車線しかない伏古・拓北通の4車線区間を片側3車線にすることでも一定の効果があると思われます。

⑤空港北東側整備の促進

丘珠空港北東側一帯は広大な玉ねぎ畑となっています。また、丘珠空港の北東側の主要道路としては明治初期に伏籠川に沿って開通した道道札幌花畔札幌線のみであり、道幅が狭くカーブが連続するにもかかわらず、大型車の通行も多いため安全に通行できるとはいい難い状態です。

現在の丘珠空港周辺の主要道路
緑色:4車線、橙色:2車線

丘珠空港活用案によると、滑走路北東側に小型航空機用のエプロン整備、防災ヘリ・MW(医療ジェット)用エプロン等整備を検討していることが判明しています。また、現在の丘珠空港は貨物取扱がありませんが、滑走路延伸により貨物も取扱うべきと思います。小型機中心の運用となるため積載量は制限されますが、エンブラエル社ではERJ-170など同社リージョナルジェットの客室を貨物室への改修も可能であるとしています。

少子高齢化によりトラック運転手の確保が困難になりつつある中、丘珠空港でも貨物を取り扱い、丘珠空港北側に物流倉庫や食品加工工場を中心とした大規模な工業団地を造成してはどうでしょうか。

滑走路延伸後の丘珠空港周辺主要道路(提案)
灰色:都市計画道路廃止区間、赤色:新規整備道路(4車線)

滑走路の北東側に整備される予定の小型航空機用のエプロン整備、防災ヘリ・MW(医療ジェット)用エプロンや、新たに整備する工業団地のため、丘珠空港の北側と北東に新たな4車線道路を整備します。

また、滑走路延伸により北東側丘珠空港緑地公園が縮小されることから、冬季間の吹きだまりにで通行止め増加が懸念される丘珠空港緑地公園内を貫通する苗穂・丘珠通(道道花畔札幌線)を伏籠川の東側に付替えます。これにより、将来的に滑走路が2000mに延伸されても道路の付替えは不要となる想定です。

まとめ

地域説明会の議事録を読んでみましたが、反対意見もあるものの地元住民から歓迎の声もあり、むしろ2000mへ延伸してLCCで使われる中型ジェット機も就航できるようにすべきという声までありました。

YS-11の時代は風向きによっては元町付近でもプロペラ騒音が聞こえたそうですが、航空機の技術が格段に進歩した現在はプロペラ騒音が聞こえることはないとのことです。

FDAのジェット機については離着陸で低高度を飛行する際はジェット騒音が気になるものの、時間にして数十秒程度なので、防音対策を行うことでクリアできるものと思われます。

ここ数年で丘珠空港の年間利用者増が続いており、2024年には空港ターミナルの搭乗待合室の拡張、売店移設工事が行われます。また、昨年まで冬季間は運休していた丘珠空港-札幌駅便も利用者増により、2023年冬から通年運行となることが決定しました。

地下鉄延伸や新交通システムの導入検討は先送りされ、2次交通としては現在と同じくバス輸送を中心として検討されていくと思われますが、老朽化している陸上自衛隊丘珠駐屯地の移転と空港ターミナル移設がセットで検討されることを望みます。

滑走路延伸を契機に貨物の取り扱い、丘珠空港の北東側に工業団地を建設することもぜひ検討してほしいと思います。

丘珠空港の滑走路延伸により国際線の就航を目指すというような動きはありませんが、日本では未就航のエアバス社A220-300は1800mの滑走路で離着陸が可能であり、航続距離が約6400kmということからアジアの主要都市と丘珠直行便を就航させることも可能です。

航空機技術の進歩により更に丘珠空港の可能性が広がっていきそうです。

※地図は地理院地図Vectorを使用しています。


東4丁目通整備について

札幌市は「はぐぐみの軸」(大通)、「うけつぎの軸」(北3条通)、「にぎわいの軸」(駅前通)、「やすらぎの軸」(創成川通)、「いとなみの軸」(東4丁目通)を骨格軸として定めて街づくりを行っていますが、東4丁目通の「いとなみの軸」整備工事が本格的に始まりました。

東4丁目通整備の概要

東4丁目通は幅員20mで4車線の都市計画道路ですが、北3条通から北5条通にかけて狭幅区間、北1条通から北2条通がクランク状、北4条通から北5条通が狭隘となっており、改善が求められていました。

東4丁目通整備概要図
橙色:①道路空間の再分配、紫色:②クランク状道路の直線化、緑色:狭隘区間の拡幅

この整備により、上図の橙色の現状4車線区間の道路空間を再分配、紫色のクランク状道路区間を直線化、同、緑色の狭幅区間を幅員20mに拡幅します。

①道路空間の再分配

現状の幅員20m区間は、歩道2.5m×2、植樹帯1m×2、車道6.5m×2の4車線として整備されていますが、これを再分配により、歩道+植樹帯5m×2、車道5m×2の車線で再整備します。

道路空間の再分配

東4丁目通は東西線バスセンター前駅やサッポロファクトリーに隣接しており、大通から北1条区間は歩行者の通行量がとても多い区間でした。北4東6周辺地区再開発で移転新築された中央体育館により、さらに歩行者が増えたように感じます。

車道へ減らして歩道を広げる工事が進む東4丁目通

道路空間の再分配で歩道が広くなることで、誰もが安心して歩行することができるようになりそうです。

地上機器(トランス)を設置する工事に見えますので、電柱地中化も行われるものと思われます。

②クランク状道路の直線化

北1条通から北2条通の東4丁目通は、明治初期の札幌開拓時代から東側約20mにずれており、東4丁目通がクランク状となっています。

ここを通る路線バスも交差点手前は右車線で信号待ち、交差点内を斜めに進行して交差点を抜けた先は左車線を走るという危険な運転が目立つ交差点です。

用地買収が完了した北1条通のクランク状区間

平成中頃から東4丁目通のクランク解消が検討されていましたが、2017年に国土交通省から事故危険箇所に指定され、一気にクランク解消が進むことになりました。

クランク解消後の道路境界(予想)

直線化後の幅員も現状と同じ20mとなりますが、他区間と同様に歩道+植樹帯5m×2、車道5m×2の車線で整備されることになります。

③狭隘区間の拡幅

北4条通から北5条通は中央中学校に隣接しているにもかかわらず幅員が約11mしかなく、一部区間においては歩道の幅が70cn程度しかなくとても危険な状態になっています。

狭隘区間の道路拡幅(予想)

今回の整備により、この区間を歩道+植樹帯5m×2、車道5m×2の幅員20mに拡幅し、歩行者も安心して歩行できる区間として整備されることになります。

かつてこの狭隘区間の東4丁目通の沿道は、北4条にサッポロファクトリーの第3立体駐車場、北5条に第4駐車場が存在していました。

拡幅を見据えてオープンスペースとなっている敷地

2016年に第3駐車場が閉鎖され、TDY札幌コラボレーションショールームがオープンした際、将来的な東4丁目通の拡幅を見据えて道路用地となるTDY札幌コラボレーションショールーム敷地の一部がオープンスペースとして確保されています。

整備後の東4丁目通構造

今回の整備により現在4車線の道路が再配分により、対面2車線になってしまう区間ありますが、車道の幅員として10mが割り当てられます。

車道の幅員が10mであれば、車線数としては3車線分を確保することが可能となりまので、基本構造は路肩が2mの対面2車線ですが、主要な交差点には右折レーンが設定されるのではないかと思われます。

東4丁目通の右折レーン(予想)

右折レーンが設けられることで夏場はある程度スムーズな流れになると思われます。しかし、冬場においては、交通の流れが悪化して渋滞がひどくなる可能性があります。

整備後の東4丁目通で懸念されること

現状4車線の道路から片側1車線の対面通行になることで、整備前に比べて渋滞が発生しやすくなることが考えられますが、現状や数年先の課題を深掘りしてみます。

①サッポロファクトリー駐車待ち車列

サッポロファクリーの第1駐車場入口は北1条通(国道12号線)側にありますが、現状の東4丁目通の左車線が駐車場の入庫待ち車列により完全に占有されてしまい、交差点を左折する車は追い越し車線を走行して左折しなければならないほどの深刻な渋滞が発生しています。

左車線を占有するサッポロファクトリー第1駐車場入庫待ちの車列

この区間は東4丁目の整備により、クランク解消と直線化されますが、車線数は対面2車線となりますので、サッポロファクリー側と協議して抜本的な対策を実施しなければ、路肩が2mあるとはいえ、冬場は路肩が雪で塞がれてしまうので、交差点で左折すらできない状態に陥ってしまう可能性があります。

②周辺で相次ぐ再開発

東4丁目通の道路沿いや周辺では大型の再開発が進んでおり、これらが全て竣工すると東4丁目通の交通量が大きく増加すると予想されます。

近年の再開発(進行中・計画中・近年完了済)

東4丁目通沿いだけを見ても、北6東3丁目で延床5万㎡のカレス医療センター、北4東4では(仮称)サッポロ不動産開発株式会社 N4E4ビル、大通東4では北海道新聞社本社ビルの建設、現在でも沿道ビルの解体が進んでいます。

これら再開発の竣工により交流人口が増加、整備前に比べて交通量も大きく増加する可能性があります。

③碁盤の目の東端道路としての役割

札幌市の中心部は碁盤の目という印象が強いかもしれませんが、創成川の東側は開拓時代から工業局や物産局が管理する工場地帯であり、この東4丁目通が碁盤の目の東端道路となっており、JRの北側と南側の碁盤の目を平面交差で移動可能な東端の道路となっています。

東4丁目通の位置づけ

東4丁目通は旭川市や道北を結ぶ国道12号線、室蘭市や道南を結ぶ国道36号線にダイレクトでアクセスできる東端道路でもあります。

主要国道にダイレクトアクセスできる利便性に加え、クランク状道路の直線化、狭隘区間の拡幅により走りやすくなることで、整備前に比べて交通量が大きく増加する可能性があります。

道路空間の再分配の是非について

歩道を広げて歩行者が安心できる空間を整備することは、とても正しい方向だと感じます。しかし、それが札幌市の骨格軸に指定されている東4丁目通の車線数を減らして実現するべきかどうかについては大いに議論の余地があると思われます。

札幌都心部では駅前通や西2丁目通をはじめ、車線数を減らして歩道を広げた市道がいくつもありますが、交通の流れは整備前に比べて明らかに悪化しています。

札幌市は豪雪地帯であることから、冬季間の道路状況悪化が常態化しており、車線数の縮小はバス運行に大きな問題を引き起こしていますが、少子高齢化による除雪車のオペレータ不足が深刻になりつつあり、近い将来には現状のような除雪体制が維持できなくなり、冬季間の道幅がさらに狭くなってしまう可能性があります。

このような中で碁盤の目道路で南北に直進できる東端の道路である東4丁目通の交通の流れを悪化させるような事業がはたして妥当なのでしょうか。

クランク状道路の解消先行ではだめなのか

たとえば、東4丁目通の幅員を22mに定め、まずは用地買収済みの区間であるクランク状道路を解消するだけではだめだったのでしょうか。

先行整備区間(案)

歩道の幅員を現在の3.5m(植樹帯を含む)から1m広げた4.5mとした幅員22mの4車線道路とすることで、歩行者の安全と4車線道路を維持することができます。

再開発を誘導しながら用地買収を行い、新幹線延伸の2030年末を目処に全区間を幅員22mで整備することも可能だったと思われます。

東4丁目通の沿道事情

東4丁目通を幅員22m拡幅する場合は用地買収が必要になりますが、東4丁目通沿いの状況がどうなっているのかまとめました。

東4丁目通沿いの土地利用状況
橙色:建物未建築、赤色:市有地、緑色:再開発中

①青空駐車場(マンションの駐車場)
②市有地(中央中学校)
③再開発中(旧サッポロファクトリー第4駐車場)
④オープンスペース(旧サッポロファクトリー第3駐車場を道路予定地を避けて再開発済み)
⑤青空駐車場など(社用の駐車場)
⑥サッポロファクトリーレンガ館前広場(イベント会場・タクシーポートなど)
⑦クランク状道路解消のために用地買収
⑧青空駐車場など(マンションの駐車場)
⑨青空駐車場など(社用の駐車場)
⑩青空駐車場など(店舗の駐車場)
⑪閉鎖されたビル(丸美ビル)
⑫市有地(都市公園)
⑬暫定青空駐車場(ビル解体跡地)
⑭青空駐車場(月極駐車場)

地権者や利用者の事情を一切考慮せず、あくまで物理的に幅員22mへの拡幅する可能性について考えてみます(現実はすんなり解決できる問題ではありません)。

北3条通から北4条通の狭隘区間

②の市有地は中央中学校ですが、十分なセットバックで校舎が建てられているため、一部を道路用地とすることは可能です。

③は札幌市と「まちづくりパートナー協定」を締結しているサッポロホールディングス株式会社の関連会社による再開発であり、事前に相談することで、幅員20mへの拡幅ではなく22mでの拡幅を前提とした再開発に理解が得られた可能性があります。

④についてはすでに幅員20mを前提とした位置に壁面が後退されており、目視レベルによると更に1m程度の拡幅が可能ではないかと思われます。

北2条通から北3条通区間

⑥はサッポロファクトリーのレンガ館の広場となりますが、ビヤガーデンや各種イベントが開催されています。先述の通り、サッポロホールディングス株式会社は「まちづくりパートナー協定」を締結していることから、1m程度の用地買収に理解が得られる可能性はあると思われます。

向い側もサッポロファクトリーの敷地であり、サッポロファクトリーホールやホテルクラビーサッポロ(ホテル創成札幌 Mギャラリーとして改装中)目視レベルでは道路境界から1.5m程度離れて建物が建ってるので用地買収は可能と思われます。

大通から北1条通区間

⑧、⑨、⑩、⑭は青空駐車として分類していますが、コインパーキングではないので、用地買収にすぐに理解が得られるかどうかはわかりません。

⑫は市有地の「あそぶべ公園」であり、1m程度の後退は可能だと思われます。

⑬はここ数年に解体されたビル、⑪はビル出入口の郵便受けにすべてテープが貼られた状態のビルで、近く解体される可能性があります。

この区間はビルの数が多く地権者も多いと予想されるため、用地買収は難航する可能性があります。

まとめ

東4丁目通のクランク状道路の解消、狭隘区間の拡幅、歩道の拡幅には賛成ですが、これまでの理由により現状4車線の車道を対面2車線に減らすことには反対です。

まずは、都市計画として幅員を22mに決定し、クランク状道路の解消を先行すべきです。東4丁目通沿いの土地利用状況から北2条通から北5条通の区間については、幅員22mとするための用地買収をはしやすい状況にあります。

大通から北1条通の区間は地権が多く用地買収に時間がかかるため、東4丁目通としての整備は行わず、地下鉄バスセンター前駅からサッポロファクトリーの約150mを地下歩行空間を整備すべきではないでしょうか。

バスセンター前駅から地下歩行空間を整備することで、サッポロファクトリーの館内通路を通り、北4東6周辺地区再開発で誕生した空中歩廊を通じで中央体育館まで雨風に当たらず行き来できるようになります。

郊外の住宅街ならまだしも、再開発が盛んで人口が急増している創世イースト地区の基軸道路の車線数を減らすような事業が行われる事に大きな疑問を感じます。