環状通の北郷~東苗穂区間はなぜ走りにくいのか

もう何十年もの間、年間に何度か走る環状通ですが、なんとなく走りにくさを感じていました。今年に入り、数日連続で走ったとこで、その走りにくさの正体がなんとなくわかりましたので、今回はこの問題を考えてみます。

全体図

環状通の北郷~東苗穂区間のうち、主に内回りで走りにくいと感じた部分をA~Eに分けました。その右側に、実際に走行するとどのように感じるのか、誇張した線形を併記しています。

全体図

A. 北郷通交差点周辺

北郷通交差点の南側に跨線橋があり、中央分離帯が通常の半分の幅のまま真っ直ぐ北郷通り交差点のまで続いています。そのため、内回りの交差点手前は道路中央に約3.5m程片寄っている状態になっています。

この片寄りは、交差点先からゆっくり通常の幅の中央分離帯に広がることで解消されていきますが、緩やかに道路左側に寄って行くため、しばらく緩やかにハンドルを左に切り続けることになります。

郷通交差点周辺(Google Earth)

中央分離帯が通常幅に戻った北郷三条付近には、環状通が「く」の字で屈折している場所がありますが、注意標識や路面標示が一切ないためか、白線を跨いで走る車も多く、外回りにおいては、中央分離帯の縁石に複数のタイヤ痕が付着しています。

「く」の字前後のハンドル操作

北郷通交差点から「く」の字を走行する場合、北郷通交差点の先でハンドルを緩く左に切り、「く」の字の手前で右へハンドルを緩やかに戻し、すぐに左にハンドルを切るという、慌ただしいハンドル操作になることも走りにくい原因です。

改善案

北郷通交差点周辺の改善案としては、内回りが道路中央に片寄っている状態の解消および、「く」の字を緩やかな曲線にすることを希望します。

北郷通交差点周辺の改善案

道路幅員は36mで整備済みのため、交差点の先は中央分離帯の幅を広げる(厳密にいうと開通当初の中央分離帯の幅に戻す)だけで、他に大きな改修はありません。交差点の手前については、異様に広い歩道を削り中央分離帯を広げる改修を行います。

くの「字」部分については、緩やかな曲線へ変更することを提案したいと思います。縁石にタイヤ痕が付着しており、すでに大きな事故に至る可能性が高い状況になっていますので、今すぐにでも注意標識を設置したり、路面標示行うべきだと思います。

B. 米里通交差点

ここは交差点の手前には、曲線半径150m(札幌市地図情報サービスによる)の大きなカーブがあり、カーブ手前には「曲線半径140m スピードダウン」の注意標識があります。

米里通交差点手前のカーブ(Google Earth)

設計速度が50km/hで曲線半径が150mは、道路構造令の基準を満たしています。しかし、カーブ区間が長いため見通が悪く、カーブを抜けてすぐ先に交差点があります。

基準は満たしているとはいえ、長い直線から緩和区間ないまま、いきなり曲線半径に入るような線形は運転しにくく、曲線拡幅もないため、実際よりも急カーブである印象を受けます。

改善案

このカーブを緩和曲線で構成される線形への変更を提案したいと思います。用地買収が必要になるため現実的には厳しいかと思いますが、冬季間は凍結路面で150Rの遠心力が連続的に発生する状況はとても危険です。

米里通交差点手前の改善案

カーブのすぐ先には交通量が多い交差点があり、信号待ちの車列がカーブ分までに及ぶこともありますので、見通しがいい安全な道路構造に改善されることを希望します。

C 環状北大橋

環状北大橋の取付道路は約6m幅の中央分離帯ですが、橋梁部の中央分離帯は約3mですので、内回りは約3m道路中央に寄るのですが、取付道路と橋梁が真っ直ぐに接続されておらず、やはり「く」の字で接続されています。

環状北大橋手前の「く」の字(Google Earth)

ここは橋梁手前の70mでハンドルを右に切り、すぐに左に切るように走らる必要がありますが、目に入ってくる道路全体の線形とは逆方向にハンドルを切って直ぐにハンドルを戻すハンドル操作になることが大きな問題です。

「く」の字前後のハンドル操作

橋梁との接続部はアプローチ部の勾配もなく水平になっていますが、橋梁や橋梁アプローチ部は路面温度が低下して凍結しやすい部分ですので、スリップ事故が誘発されやすい道路線形であるといえます。

改善案

橋梁の線形を大きく変えることは難しいので、内回りの中央分離帯を削り、橋梁に対してなるべく直線的になるように、緩やかな曲線に変えることを希望します。

環状北大橋の改良案

この区間は中央分離帯を削ることを想定しています。実際の構造上それが可能かどうかはわかりませんが、ぜひとも実現してほしいと思います。

E. 国道275号交差点

この交差点は交通量の多い国道275号線が交わる交差点ですが、すべての道路が直角でなく斜めに交わっているため、交差点を走行する際は、隣接車線を走行する車に接触したり、進路を妨害しないよう、細心の注意を払う必要があります。

まずは、交差点の走行線形を示します。

国道275号交差点の走行線形

内回り

交差点手前は本線+右折レーンの4車線になっており、通常よりも車線幅が狭く、本線が道路左側に寄っている状態になっています。また、交差点の先がアプローチ部の下り勾配になっているため、錯視により実際の屈折角度より大きく屈折しているように感じます。

内回り交差点(Googleストリートビュー)

そのためかわかりませんが、上の図のように、車線中央ではなく車線左側に寄ってしまう車が多いため、不慣れなドライバーは脅威に感じるかもしれません。

外回り

外回りの交差点を真っ直ぐ直進すると、路外に逸脱して豊平川の河川敷へ転落してしまう程の線形になっています。この交差点を走行するには交差点中心付近まで直進して、そこから大きくハンドルを右へ切ってすぐに左へ切るという操舵が必要になります。

外回り交差点(Googleストリートビュー)

また、右折レーンに大型車がいる場合、ハンドルを右に切るタイミングが遅れ、左車線を走行する車と接触しないように注意しなくてはなりません。

改善案

この交差点を改良するには、環状北大橋までに及ぶ改修ができればいいのですが、現実的にとても難しいと思われます。あくまで机上での話ですが、橋桁まで改修が及ばなく、橋台部分までの改修で可能と思われる、環状通が直角に近い角度で交差点に交わるような線形に変更することを希望します。

国道275号交差点の改善案

内回りの歩道が削らなければならないという課題はありますが、それでも現在の状況と比較するとその効果は大きいのではないかと考えています。

今すぐに可能な対策としては、信号機を右直分離方式に改良したり、交差点の手前に注意標識を設置、交差点内に破線で進行方向を示すといった対策が急がれるのではないでしょうか。

理想の線形

線形の悪さが目立つ北郷~東苗穂区間について、どのような線形が理想なのか、環状通が計画される前で田畑しかなかった1960年代まで遡りつつ考えていきたいと思います。

環状通の線形考察

いきなり結論からいうと、赤色+緑色の①→②→③→④を環状通の理想線形とします。

水色が現在の環状通、赤色は環状通が計画される前の1960年代に実在していた道路(現在は区画整理で付け替えられたりした区間が一部あり)、緑色がそれ以外の個人的に考えた線形です。

赤色①の区間は、まだこの辺りが一面田畑だった1960年頃に存在していた道路ですが、⑧の整備によって現在は面影が残っていません。③は1960年頃には道路として存在していたものの、現在は一部が切土され、道路としての面影がまったく残っていない区間もあります。

現在の環状通で目を引くのは⑤、⑥にかけての、町割に対して斜めに伸びる直線区間だと思います。⑤の区間に関しては内回りと外回りで高低差があることでもわかるように、⑤の区間は丘陵地形に沿って計画された部分と推測されます。しかしながら、⑥の区間は地形に沿っているわけではなく、地形に沿うならばオレンジ色の⑨の線形になるはずですが、⑥の線形になったのは、⑤と⑥の間に跨線橋を建設するために直線として計画したのではないかと考えました。

残る謎は⑦の部分で、なぜ⑤、⑥、⑦と直線にならなかったのかという部分です。⑥を直線的に伸ばすと、①の南端辺りが交点となります。環状通計画前の段階では市街化が進んでおらず、⑥を真っ直ぐ延長して流路変更整備された望月寒川とも直角に交わり、最終的に①と緩いカーブで結ぶことも可能だったはずです。

しかしながら、不自然に⑦の線形になり、①の道路が存在していたものの、それを利用せずに⑧の急カーブが誕生してしまったのが非常に残念でありません。

ここまでの考察をまとめると、冒頭で①→②→③→④が暫定の理想の線形といいましたが、地形を考慮すると③、④は少し無理が生じるので、現実的には①→②→⑨→⑤が妥当なのかもしれません。

最後に

環状通の北郷~東苗穂区間を改良することで、少子化による運転手不足解消が期待される、ダブル連結トラックも安全に走行できるようになると思われます。

ここまで指摘してきたことは小さいことかもしれませんが、環状通を利用するのは地元人だけではありません、今すぐにでも注意標識を設置したり路面標示を行なうべき場所もあると思います。

安全で快適な走行ができるように改善されることを望みます。

※地図は一部を除き地理院タイル(©国土地理院)を使用しています。
※道路からの写真はGoogleストリートビュー(©Google)の画像を使用しています。
※俯瞰図はGoogle Earth(©Google)の画像を使用しています。

北5西1・2再開発と創成川横断デッキ

2023年3月29日に札幌駅交流拠点北5西1・西2地区市街地再開発組合の設立が認可され、近く北5西1・2再開発事業が着工される見通しとなりました。再開発に合わせて北5西1街区と北5東1街区をデッキレベルで結ぶ創成川横断デッキが計画が当初構想から変更されているようですので確認してみます。

計画初期の位置

計画当初は北5条通から30メートル程度の場所に計画されていましたが、これは、2つのバスターミナルを結ぶ2階動線の延長線上に創成川横断デッキを配置する構想だったと推測されます。

第3回 札幌駅交通ターミナル検討会
https://www.hkd.mlit.go.jp/sp/douro_keikaku/gburoi000000v4i6-att/gburoi000000yxzo.pdf

当初の歩行者デッキ位置
第3回 札幌駅交通ターミナル検討会資料から抜粋

計画後期の位置

計画後期になると、創成川横断デッキが新幹線札幌駅にかなり近い位置に変更されました。この理由としては、2つのバスターミナルと新幹線の西口改札との動線が確定したことによる変更と推測されます。

第5回 札幌駅交通ターミナル検討会
https://www.hkd.mlit.go.jp/sp/douro_keikaku/gburoi000000v4i6-att/e1lg9o000000dvgc.pdf

後期の歩行者デッキの位置
第5回 札幌駅交通ターミナル検討会から抜粋

創成川横断デッキの構造

検討会の資料では「デッキレベルでの接続」「創成川通を横断するデッキの検討」と表現されていますが、これはいわゆるペデストリアンデッキなのか、全天候型の空中歩廊なのかまだ明確になっていません。

歩行者デッキを含むイメージパース
第5回 札幌駅交通ターミナル検討会から抜粋

第5回 札幌駅交通ターミナル検討会に掲載されたイメージパースによると、幅6メートル前後で屋根がないデッキとして描かれていることがわかりました。

日本各地には屋根付きのペデストリアンデッキがありますが、札幌の場合は真冬を考えた場合、全天候型の空中歩廊であるべきと考えます。

創成川横断デッキと新幹線札幌駅

創成川横断デッキは新幹線札幌駅から最も近い場所で6m程度しか離れていなく、空中歩廊として整備された場合は大型ガラスが特徴である新幹線札幌駅から眺望が完全に遮られてしまう可能性が出てきました。

しかし、公開されている札幌駅舎の断面図を基に計算すると、新幹線札幌駅のホームは創成川横断デッキよりも高い位置にあるため、完全に遮断されるものではないことがわかりました。

新幹線札幌駅からの眺望(予想)

創成川横断デッキがガラス多用の空中歩廊で整備された場合、新幹線札幌駅のホームからの眺望はどのようになるか、以前に作成した北5西1・2再開発の3Dモデルを使って予想してみました(3Dモデルの内装は作り込み不足のため、あくまで参考レベルです)。

新幹線札幌駅のホームからの眺望(予想)

新幹線ホームは碁盤の目に対して斜めに建設されるため、ホームの西端と左端では空中歩廊との距離も大きく異なりそうです。また、空中歩廊の全長は65m程度となると思われますので、この3Dモデルのような単純な構造では剛性不足となることから、空中歩廊のガラス窓は3Dモデルよりも短いものになると思われます。

札幌市議会での意見・答弁

札幌市議会で創成川横断デッキについてのどのような意見や答弁があったのか議事録を探してみました。

■令和4年第2回定例会-05月31日-03号 から引用
改札口は、新幹線乗降客が利用する施設となりますが、創成川横断デッキは、地域住民を含め、誰もが自由に利用できる施設として整備するものであります。加えて、北5西1・西2地区をはじめとした周辺再開発と連携されることによりまして、新幹線駅と駅周辺を結ぶ快適な歩行者ネットワークを充実させていきたいと考えているところでございます。

■令和 3年(常任)総務委員会-10月01日-記録 から引用
(中略)また、空中歩廊・デッキの位置はまだ決まっていないようでありますけれども、様々な西1丁目街区と東1丁目街区の人の流れの関係を想定すると、可能な限り北5条通寄りにすべきだと要望しておきたいと思います。

ここから見えてくるのは、創成川横断デッキは再開発ビル利用者だけでなく誰でも自由に利用できる施設であることがわかりましたが、誰もが自由に利用できる施設であるならば、意見の通り北5条通寄りにすべきとも思えます。

新幹線札幌駅寄りするメリットとして考えられる事は、再開発が盛んな北6条東2~3街区や大型再開発が期待される北6東1や北7東1に近いということでしょうか。