北5西1・2再開発と創成川横断デッキ

2023年3月29日に札幌駅交流拠点北5西1・西2地区市街地再開発組合の設立が認可され、近く北5西1・2再開発事業が着工される見通しとなりました。再開発に合わせて北5西1街区と北5東1街区をデッキレベルで結ぶ創成川横断デッキが計画が当初構想から変更されているようですので確認してみます。

計画初期の位置

計画当初は北5条通から30メートル程度の場所に計画されていましたが、これは、2つのバスターミナルを結ぶ2階動線の延長線上に創成川横断デッキを配置する構想だったと推測されます。

第3回 札幌駅交通ターミナル検討会
https://www.hkd.mlit.go.jp/sp/douro_keikaku/gburoi000000v4i6-att/gburoi000000yxzo.pdf

当初の歩行者デッキ位置
第3回 札幌駅交通ターミナル検討会資料から抜粋

計画後期の位置

計画後期になると、創成川横断デッキが新幹線札幌駅にかなり近い位置に変更されました。この理由としては、2つのバスターミナルと新幹線の西口改札との動線が確定したことによる変更と推測されます。

第5回 札幌駅交通ターミナル検討会
https://www.hkd.mlit.go.jp/sp/douro_keikaku/gburoi000000v4i6-att/e1lg9o000000dvgc.pdf

後期の歩行者デッキの位置
第5回 札幌駅交通ターミナル検討会から抜粋

創成川横断デッキの構造

検討会の資料では「デッキレベルでの接続」「創成川通を横断するデッキの検討」と表現されていますが、これはいわゆるペデストリアンデッキなのか、全天候型の空中歩廊なのかまだ明確になっていません。

歩行者デッキを含むイメージパース
第5回 札幌駅交通ターミナル検討会から抜粋

第5回 札幌駅交通ターミナル検討会に掲載されたイメージパースによると、幅6メートル前後で屋根がないデッキとして描かれていることがわかりました。

日本各地には屋根付きのペデストリアンデッキがありますが、札幌の場合は真冬を考えた場合、全天候型の空中歩廊であるべきと考えます。

創成川横断デッキと新幹線札幌駅

創成川横断デッキは新幹線札幌駅から最も近い場所で6m程度しか離れていなく、空中歩廊として整備された場合は大型ガラスが特徴である新幹線札幌駅から眺望が完全に遮られてしまう可能性が出てきました。

しかし、公開されている札幌駅舎の断面図を基に計算すると、新幹線札幌駅のホームは創成川横断デッキよりも高い位置にあるため、完全に遮断されるものではないことがわかりました。

新幹線札幌駅からの眺望(予想)

創成川横断デッキがガラス多用の空中歩廊で整備された場合、新幹線札幌駅のホームからの眺望はどのようになるか、以前に作成した北5西1・2再開発の3Dモデルを使って予想してみました(3Dモデルの内装は作り込み不足のため、あくまで参考レベルです)。

新幹線札幌駅のホームからの眺望(予想)

新幹線ホームは碁盤の目に対して斜めに建設されるため、ホームの西端と左端では空中歩廊との距離も大きく異なりそうです。また、空中歩廊の全長は65m程度となると思われますので、この3Dモデルのような単純な構造では剛性不足となることから、空中歩廊のガラス窓は3Dモデルよりも短いものになると思われます。

札幌市議会での意見・答弁

札幌市議会で創成川横断デッキについてのどのような意見や答弁があったのか議事録を探してみました。

■令和4年第2回定例会-05月31日-03号 から引用
改札口は、新幹線乗降客が利用する施設となりますが、創成川横断デッキは、地域住民を含め、誰もが自由に利用できる施設として整備するものであります。加えて、北5西1・西2地区をはじめとした周辺再開発と連携されることによりまして、新幹線駅と駅周辺を結ぶ快適な歩行者ネットワークを充実させていきたいと考えているところでございます。

■令和 3年(常任)総務委員会-10月01日-記録 から引用
(中略)また、空中歩廊・デッキの位置はまだ決まっていないようでありますけれども、様々な西1丁目街区と東1丁目街区の人の流れの関係を想定すると、可能な限り北5条通寄りにすべきだと要望しておきたいと思います。

ここから見えてくるのは、創成川横断デッキは再開発ビル利用者だけでなく誰でも自由に利用できる施設であることがわかりましたが、誰もが自由に利用できる施設であるならば、意見の通り北5条通寄りにすべきとも思えます。

新幹線札幌駅寄りするメリットとして考えられる事は、再開発が盛んな北6条東2~3街区や大型再開発が期待される北6東1や北7東1に近いということでしょうか。


都心アクセス道路

2022年からボーリング調査が行われていた都心アクセス道路ですが、その調査の結果が一般公開されました。

一般国道5号創成川通 土・水処理対策検討会(第1回)
https://www.hkd.mlit.go.jp/sp/douro_keikaku/e1lg9o000000avho-att/e1lg9o000000dk6g.pdf

これまでも、札幌市地図情報サービスや都市計画決定資料、北海道開発局で「道路」についての資料は公開されていましたが、今回の公開された資料では、暗渠となる創成川の流路、高架橋や地下トンネルの寸法入り断面図、地質特性、地下水脈が記載されておりとても貴重な資料となっています。

都心アクセス道路とは

都心アクセス道路とは、いわゆる石狩街道(正式名、創成川通)の北3条~北36条の地下に自動専用の地下トンネルを建設する都市計画道路です。全面開通すると、創成トンネルと接続され、南5条~北36条まで全長約6kmの地下トンネル方式による自動車専用道路となります。

都心アクセス道

※都心アクセス道は正式な名称ではありません。既存の創成トンネルと接続されますので、最終的な名称も創成トンネルとなる可能性があります。また、出入口ランプの名称は公開されている資料中でもユレがありますので、変更される可能性があります。

新設される出入口ランプ

都心アクセス道は札樽自動車道からの直結ランプを含め、7つの新設ランプ、2つの既存ランプが設置される計画となっています。

北36条入口(南進)・出口(北進)

北36条出入口

都心アクセス道北端の出入口となるのが北36条入口・出口です。北進は北26条出口から、南進は北32条入口まで片側一車線で渋滞や事故が多発している石狩街道と札幌新道の交差点を通過することができます。

北32条入口(南進)

北32条入口

札幌新道と石狩街道の交差点のすぐ南側に北32条入口があります。札幌新道を右左折して都心へ向かう交通はこの北32条入口を利用することになると思われますので、地上の交通量が大きく減少することになりそうです。

北27条入口(札樽自動車道専用)

北27条入口(高速直結)

北27条入口は札樽自動車道直結の入口で、地上から入ることはできません。高架橋と地下トンネルの高低差が約22mあるため、約400mに及ぶスロープが設けられます。

北26条出口(北進)

北26条出口(北進)

北26条出口は札樽自動車道北ICに最寄りの出口となります。この出口から北ICまで、しばらく地上の石狩街道を走行する必要があります。

北10条出口(南進)、北8条入口(北進)

北10条出口(南進)、北8条入口(北進)

北10条出口、北8条入口はJR札幌駅の最寄り出入口となります。札樽自動車道を利用する都市間高速バスはこのランプを利用するようになると思われます。

北3条出口(北進)、北4条入口(南進)

北3条出口(北進)、北4条入口(南進)

創成トンネル北側の出入口となっている北3条出口、北4条入口は、そのまま都心アクセス道の出入口として利用されることになります。

都心アクセス道の課題

巨費を投じて整備される都心アクセス道ですが、その事業対象区間がすべて国道であることを活かして民有地を買収せずに実現しており、その設計にはかなりの苦労があったと思いますが、いくつかの課題も見えていますので考えてみます。

現在の石狩街道について

都心アクセス道の課題を考える前に、現在の石狩街道はどのような道路構造となっているのか触れておくと、石狩街道は南7条~北12条の幅員56.82m区間、北13条~北33条の幅員40m区間の2つの道路構造に分別されます。

石狩街道の道路構造

なぜ、このように2つの道路構造があるのか、石狩街道の歴史をふりかえってみます。

札幌オリンピック前までは東1丁目通が石狩街道と呼ばれていましたが、札幌オリンピックによるインフラ整備のひとつとして北13条~北33条間の創成川左岸が北進3車線の一方通行道路として新たに整備され、北33条~北13条の石狩街道が南進3車線となりました。

オリンピック前の石狩街道

この北進3車線道路は碁盤の目地区にありながらも、札幌開拓の都市計画にはない、まったく新しい道路として整備されたものも大きな特徴です。

その後、対面通行区間であった石狩街道の北33条以北の渋滞が問題となり、昭和54年から国の直轄事業として北13条~石狩町(現、石狩市)間を6車線として整備することが決定し、北13条~北33条間は創成川右岸に新たな南進3車線の一方通行道路を整備する工事がはじまり、平成元年に現在の姿である幅員40mの道路になりました。

このような歴史で誕生した幅員40mの区間に北26条出口、北32条入口、北36条出入口、北27条入口(高速ダイレクトアクセス直結)のランプが整備されますが、出入口ランプを整備すると道路中央を流れる創成川がトンネル躯体の障害となってしまいます。

創成川の暗渠化

そのため、北23条~北37条間の道路中央に流れる創成川が暗渠となり、この区間の地上からその姿を完全に消すことになります。

課題1:札樽自動車道千歳方向へのアクセス

都心アクセス道の整備後も、札樽自動車道の千歳方面へ直接アクセス不可能なままで、従来どおり札幌北ICを利用することになるのですが、最寄りとなる都心アクセス道のランプは約1.6km離れた北26条出口となります。

車なら信号待ちを含めて数分程度と思われがちですが、北26条出口から札幌新道間は夏と冬で大きく状況が異なり、夏は距離の割には右折可能な交差点は2つしかなく、信号機もその2つ(押しボタン式信号機を除く)しかなく、法定速度を悠々と超える速度で走行する車さえ多い区間です。

札樽自動車道千歳方向へのアクセス

ところが、雪で道幅が狭くなる冬になるとその状況は一変し、石狩街道と札幌新道の交差点で発生する右折待ち車列が右折レーンを超えて走行車線まで伸び、直進方向の流れが悪化、北29条にある札幌創成高校辺りまで渋滞が発生する区間です。

都心アクセス道の整備後も、最寄りのランプが北26条出口であるならば、夏なら数分しかかからない区間が、冬では15分~20分かかる区間を走る必要があり時短効果が発揮できないばかりか、交通が集中することにより、今よりもひどい渋滞が誘発される可能性があります。

課題2:札樽自動車道小樽方向からのアクセス

北27条入口ランプにより札樽自動車道の千歳方向から、高速を降りずに都心アクセス道に直接アクセスすることが可能になりますが、小樽方向から直接アクセスすることはできません。

札樽自動車道小樽方向からのアクセス

現在も札幌北IC(小樽方向からの出口)すぐ近くの五叉路で信号待ち渋滞が多発しており、その先の札幌新道と石狩街道の交差点は高速道路の橋脚による見通しの悪さから、過去ワースト2に入るほど交通事故が多発する交差点を右折して北32条入口に入る必要があります。

北海道新幹線が延伸するとニセコ(倶知安)を通る函館本線の山線区間が廃止されるため、札樽自動車道小樽方向からの交通量は増えるという予想があるにも関らず、札樽自動車道の小樽方向からアクセス道へダイレクトにアクセスできない構造は大きな課題であると感じます。

課題を改善する案

都心アクセス道の実計画で最終決定された出入口ランプの場所は、さまざまな観点から検討して考え抜いた結果だとは思います。無理な部分も多いのは承知の上、私案を考えてみました。

私案1

民有地を買収しなくても実現可能な想定範囲で考えました。現実の計画では北26条出口~北36条出口の北進方向は片側1車線ですが、この私案では北26条出口~北33条出口までを片側2車線としています。

課題改善案1

主な内容としては、実計画の北32条入口を120m程度南へ移動させ、札幌新道の交差点30m手前に北33条出口を設けます。交差点を右折してから約300mで札幌北ICへアクセスできます。万が一、札幌新道の交差点で右折する車列がトンネル内まで伸びたとしても、地下トンネルを2車線とすることで北36条出口に向かう直進への影響は少なくなる想定です。

私案2

次に、短期間での実現は「絶対無理」とわかりつつも、民有地を買収して都心アクセス道と札樽自動車道をインターチャンジと近いレベルで接続する案です。

課題改善案2

都心方向から北37条出口、北33条出口、北34条出口、札幌北IC出口直結の北33条入口へ通じるトンネルの下層に、南進方向のトンネルを設ける2層のトンネル構造とします。さらに、札樽自動車道の小樽方向から本線を跨ぐように都心アクセス道へのダイレクトアクセス橋を整備します。

この私案であれば、都心アクセス道と札樽自動車道のアクセスは冬季間であっても時短効果が発揮されると思われますし、民有地の買収を伴うことから、地上も歩道の拡幅や周辺の再開発を行うことで新たしい街に生まれ変わるような気がします。

都心アクセス道の附帯整備

都心アクセス道の整備は地下トンネルの建設工事だけではなく、いくつかの付帯した工事も行われます。

創成川の流路変更

石狩街道の中央に流れる創成川ですが、北8条~北12条間は創成川の前身である開拓時代に寺尾堀(旧大友堀の北側)として掘削された部分から西側に大きく寄っています。

創成川の流路変更

このままでは都心アクセス道の北8条入口ランプ整備の障害となるため、創成川の流路も道路中央に変更されます。

歩道拡幅と電柱地中化

現在の石狩街道は北10条~北13条間のみ、北進方向の歩道幅員がわずか1.2m程度しかありません。そこに電柱が立ち、ガードレールも設置されていないため、安心して歩行することができません。

北10条~北13条間の狭隘歩道区間

都心アクセス道の整備により、一部区間を除いて地上は片側3車線から2車線となり、地上2車線・地下2車線の片側4車線となります。地上が2車線なることで歩道の拡幅や電柱地中化も行われる予定です。

完成予定

都心アクセス道は新幹線札幌延伸が予定されている2030年の完成を目指しています。

札樽自動車道とのダイレクトアクセスにより、札幌新道や札樽自動車道にも直接的な工事が及び、札幌開拓の礎となった創成川の暗渠化や流路変更も行われます。

2030 札幌オリンピック招致は世論により極めて厳しい状況ではありますが、1972 札幌オリンピックにより整備された石狩街道が再びオリンピックと無関係ではない時期に合わせて大規模な整備が行われることに感慨深いものを感じます。