(仮称)札幌駅交流拠点北5西1・西2地区第一種市街地再開発事業の環境アセスメントが終盤に差しかかり、その概要が明らかになってきました。今回は現在公開されている資料から再開発ビルについて深掘りしてみます。
引用元
[1] 札幌駅交通ターミナルにおける施設計画・機能の検討
https://www.hkd.mlit.go.jp/sp/douro_keikaku/gburoi000000v4i6-att/e1lg9o0000008fdg.pdf
[2] 環境影響評価準備書要約書(2)
https://www.city.sapporo.jp/kikaku/downtown/sapporoeki/documents/5152yoyaku_2.pdf
[3] 第8章 環境影響評価の調査、予測及び評価の結果(12)
https://www.city.sapporo.jp/kikaku/downtown/sapporoeki/documents/5152zyumbisyo_25.pdf
[4] 第8章 環境影響評価の調査、予測及び評価の結果(13)
https://www.city.sapporo.jp/kikaku/downtown/sapporoeki/documents/5152zyumbisyo_26.pdf
[5] 第8章 環境影響評価の調査、予測及び評価の結果(14)
https://www.city.sapporo.jp/kikaku/downtown/sapporoeki/documents/5152zyumbisyo_27.pdf
3D都市モデル(Project PLATEAU)札幌市(2020年度)LOD1、LOD2データ
https://www.geospatial.jp/ckan/dataset/plateau-01100-sapporo-shi-2020
再開発ビルの概要
札幌駅交流拠点北5西1・西2地区市街地再開発準備組合が北5条西1丁目、西2丁目に計画している、地上43階・地下4階、最高高さ約245m、述べ面積388,500㎡の超高層ビルです。基壇部にバスターミナルや商業施設、高層部にオフィスや外資系高級ホテルとからなる複合ビルとなり、2030年度に開通予定の新幹線札幌駅西口駅ビルと一体で整備されます。
再開発ビルは札幌市環境影響評価条例に基づく環境アセスメントの対象となっていますが、環境アセスメントの手続きが進むにつれ環境への影響を抑制すべく再開発ビルの規模が変更されてきました。
図書(環境アセスメントの段階) | 最高高さ | 延べ面積 | 変更理由 |
計画段階環境配慮書 | 約255m | 約417,000㎡ | |
環境影響評価方法書 | 約250m | 約395,000㎡ | 風害対策のため255m→250mに変更 |
環境影響評価準備書 | 約245m | 約388,500㎡ | 電波障害対策のため250m→245mに変更 |
2019年11月にJR北海道が高さ230mの超高層ビルを目指すとしてスタートした再開発ビル構想は、ようやく事実上の最終段階である環境影響評価準備書まで進んでいます。今後はバスターミナル検討会の結果が出てから調整した後に都市計画審議会で審議されていくものと思われます。
再開発ビルの景観
再開発ビルはどのような景観になるのか、環境アセスメント資料に掲載されたイメージパースのいくつかを抜粋して確認してみます。
札幌駅南口駅前広場から
再開発ビルの基壇部は現ビルの高さに近く、さらにその位置関係もほぼ同じことから、景観が変わった印象はほとんどありません。高層部においても1街区先の西1丁目に位置するため、駅前広場へ影響はまったく感じられません。
北6西1から
新たに建設される新幹線ホームや新幹線西口駅舎により再開発ビル基壇部の大部分が隠れてしまうようです。再開発ビル北側はビル風対策のために基壇部が隅切りがされていたり、高層部よりも幅の広い高さ82mの中間層が設けられていたり、高層部の隅角部が曲面になっていますが、圧迫感の軽減にも寄与しているのが特徴です。
JRタワー展望台から
JRタワー38階の展望台から東方面の眺望は再開発ビルで眺望が遮られてしまいますが、再開発ビルの高さ190mに配置される展望デッキが視界に飛び込むようになっており、単調なビル風景とならないような工夫がされています。
北4西1から
高層部が基壇部からさらにセットバックしていることや、石狩街道の幅員が57mあることもあり圧迫感はまったく感じられません。北5東1に高層ビルが建設されたとしても景観を悪化させることはまったくなさそうです。
再開発ビルの機能
再開発ビルの1階にはバスターミナルや交通広場が配置され、西2丁目側は路線バスターミナル、西1丁目側は都市間バスターミナルと交通広場(タクシープールやタクシー乗車バース)が整備される予定です。
バスターミナルで札幌駅周辺の路上バス停や廃止される大通バスセンターが集約されます。都市間バスターミナルは大通にある中央バスターミナルと集約または相互経由による運用を視野に検討されています。
再開発ビルの予想
公開されている配置計画図を基に再開発ビルを立体化して、再開発ビルの景観や機能を確認していきます。なお、参考として北3西4再開発ビルもモデル化しています。
南側からの眺望
JRタワーと比べると高さはもちろんですが、北4西3再開発ビルと共にビル幅も大きく凌駕しています。北8西1で約175m、北6東2で約100m✕3棟の再開発が進んでいますが、創成川東地区に140m~160m級のビルが数棟あるとバランスのとれたスカイラインが形成されると思います。
北東からの眺望
この方角から見るとJRタワー高層部と再開発ビルの高層部はそれほど接近していないことがよくわかります。また、高層部はどの方向から見ても異なる顔を見せるのが特徴的であり、北側は吹き下ろしのビル風対策がされており飽きのこない形状になっています。
北5西3からの眺望
再開発ビルの基壇部は現ビルの形状や高さがほぼ変わらないので違和感がほとんど感じられません。北4西3再開発ビルと共に同じような高さの基壇部を持つ大型ビルが並ぶことで中層部のスカイラインがとてもスッキリします。
北4西2からの眺望
再開発ビルは西2丁目通を跨いだビルとなり、西1丁目、西2丁目どちらも1階はバスターミナルとまります。再開発ビルの1階部分はすべてがバス待合スペースとなるのか一部が商業施設となるのか発表されていません。
JRタワーホテルエントランス前からの眺望
西2丁目通のほとんどの区間は再開発ビルや新幹線ホーム、新幹線・在来線高架橋で上空を覆われることになります。現在の西2丁目通の歩道はバスターミナル手前の歩道橋で途切れています。再開発に合わせて歩道橋を撤去する方向で検討されているので歩道がどのようになるか注目しています。
路線バスターミナル入口
路線バスターミナルは降車バース4台分、待機バース4台分が配置されます。乗降バースは再開発ビル内に2レーン12台分に設置されます。風景としてとらえると現バスターミナルと大きな変化はなさそうです。
路線バスターミナル出口
路線バスターミナルの出口は現バスターミナルと同じく西2丁目通側となりますが、再開発ビルは西2丁目通を跨いで建設されるためその風景は大きく異なったものになると思います。
現バスターミナルの乗車バースは3レーン18台分ありますが、新バスターミナルは都市間バスと路線バスでターミナルが分散されるので新しい路線バスターミナルは2レーンとなります。
都市間バスターミナル出入口
都市間バスターミナルは乗降バース8台分、待機バース5台分で検討されており、石狩街道(国道5号線)側がバス出入口となります。出入口は石狩街道南進にも接続され都市間バスが出入するようになりますので、新たに整備するであろう取付道路の交差点に信号機を新設する必要があるかもしれません。
都心アクセス道として石狩街道地下に創成トンネルと札樽自動車道を結ぶ自動車専用道が整備されるため、石狩街道の地上部がどのように改良されるのかにも注目しています。
今後事業化される北5東1再開発地区とデッキでの接続が検討されています。新幹線ホーム躯体と一体化してその一部を自由通路とすればいいのではないか思うのですが、バスターミナル検討資料によると再開発ビル中央付近に設置する方向で検討されてるようです。
北5東1は東街区が札幌市が請願して整備する新幹線東口駅舎、西街区に民間による再開発が計画されているといわれています。
交通広場出入口
北5西1の北側は新幹線西口に直結するタクシープールやタクシー乗車バースが整備されます。出入口は西2丁目側と石狩街道側に設置されますが、新幹線西口駅舎建設により廃止された北6条通の代替として場内通路のような役割を持ち合わせているのかもしれません。
最後に
高さ245mという高さだけが強調される傾向にありますが、四角い単調なビルではなく色々な工夫が感じられるビルです。基壇部は高さ55mに抑えられていますが、66m✕2、77m、82mの部分も多く、それらを集約すると高さが120m程度となります。
JRタワーとの比較でよくよくわかりますが、ここまで大きなビルが建つと周囲に170m程度のビルが建っても悪目立ちしなくなりますので、創成川東地区で大街区再開発が可能な地区は140m~160mを目指してほしいです。