大通西4丁目で地上34階地下3階建て最高高さ地上185mの再開発計画が発表されました。
(仮称)大通西4南地区第一種市街地再開発事業 都市計画手続きについて
https://www.fse.or.jp/files/lis_tkj/22071288031.pdf
この計画に対して、大通公園沿いに185mという高層ビルを建設すると大通公園がビルの影になってしまい、景観審議会や景観アドバイスや景観アドバイス部会の段階で大通公園が影にならないようにビルの高さを低く抑えるような勧告があるのではないかという心配が掲示板に寄せられました。
景観審議会とは?
札幌市景観審議会は、札幌市景観条例に基づき設置された良好な景観の形成に関する重要事項を調査・審議するための市長の諮問機関となります。
札幌市景観審議会
https://www.city.sapporo.jp/keikaku/keikan/singikai/singikai.html
景観審議会の権限として、「景観法に基づく勧告、変更命令等」が可能となっています。
景観アドバイス部会とは?
一定の基準を満たす建築計画において、その事業者と意見交換を行うため、札幌市景観審議会に設置された専門部会で、計画の早い段階で専門家がアドバイスを行う制度です。
景観アドバイス部会
https://www.city.sapporo.jp/keikaku/keikan/singikai/keikan_advice/advicebukai.html
どのような内容が協議されるかについて、環境プレ・アドバイス手続き資料によると、札幌市の景観形成基準や、計画地の歴史、自然環境、周辺の街並みなどの地域特性を踏まえ、どのような景観上の配慮をして設計することが望ましいか等について、専門家(景観アドバイス部会委員)を交え協議します。
景観プレ・アドバイスの手引き
https://www.city.sapporo.jp/keikaku/keikan/guideline/documents/01-11.pdf
ビル影の模擬実験
まずは、大通西4に185m、大通西3に100m、大通西2に60m,大通西1に45mのビルがあると仮定して、08:00~16:00の時間帯におけるビル影がどのようになるか模擬実験してみました。
秋分
一目瞭然の結果となりましたが、185mのビル影は大通公園全体に影が落ちます。しかしながら、100mビルも同じく大通公園全体に影が落ち、ビル影だけに注目すると185mと100mのビルに大きな差はないということがわかりました。
夏至
札幌市は北緯41度と高緯度に位置するため夏至の南中高度は約70度もあります。100mのビルでも大通公園の一部に影が落ちますが、185mのビル影では大通公園の約半分ほどにビルの影が落ちる結果となりました。
都合のいい言い方をすれば、最近の札幌は気象変動の影響を受け、夏の最高気温が高くなっていますので、ビルの日影は熱中症の対策として有効なのではないでしょうか。
大通交流拠点地区の高さ規制
札幌都心部には高度制限(いわゆる高さ規制)はありませんが、今回の大通西4を含む大通と駅前通が交差する四つ角は「大通交流拠点地区」地区計画として60mの高さ制限が設定されています。
大通西3の「たくぎん」が再開発されることになり、60mの高さ制限が100mに緩和されましたが、その過程について、平成19年の市議会議事録を確認したところ、次のような趣旨の反対意見が複数ありました。
大通公園は開放感があり、テレビ塔の展望台は90メートルの位置にある。その至近距離に100メートルのビルが建つということは景観を遮ったり、日影がこれ以上広がるので、たとえ大通や駅前通からセットバックしても高さの制限を100メートルへ緩和ことに反対する。
この反対意見に対して、都市計画部長から次のような趣旨の答弁がありました。
60メートルを超える部分は高層部分をセットバックして圧迫感を抑える、今回この条例を定めないと無秩序に高層ビルが建って大通公園の環境が守られない。この地域に求められる高度利用を考慮すると100メートルの高さ規制は妥当と考える。
大通西3再開発において60mから100mへの緩和でさえ、このような反対意見が出されたのに、その斜め向かいの大通西4に100mを大幅に上回る185mという高さの審議となると、どれ程の(再開発の意味、地区の役割を理解しない)反対意見が出るか、またそれに対してどのような答弁となるのかが注目されます。
景観ってなんでしょう?
大通公園は「日本の都市公園100選」や「都市景観100選」にも選定され、雪まつり会場、オータムフェスト会場、2020東京オリンピックのマラソンのスタート、ゴール地点としても全国的に知られています。
あくまで個人的なイメージとしては、広く開放感のある大通公園沿道に200m程度のビルが建ってもいう程の圧迫感はなく、むしろ大通や創成川通のような幅の広い道路沿に超高層ビルを集約していくことで景観が守られるように感じます。
現在の大通沿いは道路境界ギリギリに45mや60mのビルが隙間なく並び、ビルとビルの隙間から日が射すこともないような風景こそ景観や日照を阻害しているのではないかと感じます。
また、建築当時はそれが普通ではあるものの、低層階の階高が低く窮屈なイメージのビルが多いのも印象であり「大通公園」だけでなく、南大通のイメージアップも戦略として必要と感じます。
今回の大通西4の再開発ビルは、歩道からセットバックされ、基壇部はガラスカーテンウォールで高さも低く抑えられ歩道からの圧迫感を抑える工夫や賑わい創出も考慮されています。また、角が丸い高層部は大通公園に新しい風を吹き込むことでしょうし、高層棟のガラスカーテンウォールに映る大通公園のシルエットもとても楽しみです。
今回の模擬実験で大通西4の再開発ビルの高さが175m(最高高さ185m)から、例えば10m、20m低くしたところで大通公園への日照に大きさな変化はなく、100mのビルと大差ないことがわかりました。環境アセスメント対象ではありませんので、このままの計画で都市計画が決定することを願います。