もみじ台地域の街づくりついて

札幌市厚別区のもみじ台地域は、1970年代前半に未開の森林に新たな住宅地を造成する「東部地域開発基本計画」地域よりさらに東部の江別市や北広島市との境界に造成された約242万㎡に及ぶ市営住宅と分譲住宅からなる住宅団地です。

もみじ台地区(赤色)

もみじ台地域は昭和40年に開発が決定して造成されましたが、昨今では同時期に造成された周辺のニュータウンと同じような問題を抱えており、札幌市が「もみじ台地域まちづくり指針」を策定して、新たな街づくりが検討されています。

今回はもみじ台地域の課題確認と個人的な展望を考えていきますが、札幌市が示した街づくりの方向と同じ視点では意味がありませんので、いつもながらの大胆な再生案を考えてみます。

もみじ台地域の衛星写真

もみじ台地域に接続する幹線道路

もみじ台地域の東部や北部は森林で覆われており、もみじ台地域と接続する南郷通、もみじ台通、厚別青葉通については、もみじ台地域で行き止まりとなります。

もみじ台地域に接続する幹線道路(実線:4車線以上、破線:2車線)

もみじ台地域を東西に移動する主要道路は南郷通と厚別青葉通しかなく、この2つの道路に交通が集中してしまいます。また、青葉地区で厚別青葉通が2車線になっており、この部分がネックとなり時間帯によっては渋滞が状態化しています。

南北への移動は4車線道路の厚別東通、もみじ台東1号線直線で比較的移動しやすそうに見えますが、もみじ台地域が丘陵地帯に造成された団地ということでかなりの高低差があります。

もみじ台地域の坂道

道路の勾配とカーブという組み合わせは冬道運転に慣れているドライバーにとっても慎重に運転しなければならず、足腰の弱い高齢者にとっても大きなハンデとなります。

もみじ台地域の陰影起伏図

もみじ台地域の陰影起伏図を見てみると、土地起伏に合っていない道路で切土・盛土されており、擁壁で支えられてた構造になっているのがよくわかります。

もみじ台地域の幹線道路

もみじ台地域の主要道路はニュータウンによく見られる、車のスピードを抑制しやすい曲線道路で構成されています。

もみじ台地域の主要道路(黄:4車線、緑:2車線)

なかでも、もみじ台地域を縦断する厚別東通はカーブでもみじ台地域の中央地区を経由する線形のため、主要国道からもみじ台地区を通過する大型トラックなども大きく迂回することになってしまいます。

また、同じくニュータウンによくある構造ですが、幹線道路と接続している住宅街の生活道路は、そのまま内部に直進できないように、車両通行止めになっている道路が多く見られます。

住宅地にある車両通行止め道路

一部の地図では車両通行止めではなく、車両も通行可能な隘路として表現されているため、土地勘がなくナビゲーションを頼りにしていると目的地にたどり着くのに苦労するかもしれません。

もみじ台地域の土地利用

もみじ台地域は市営住宅と戸建て住宅で構成されていますが、昭和40年中頃から昭和60年にかけて建設された市営住宅は、もみじ台地域全体の約20%を占めています。

市有地
(橙:市営住宅、青:中学校、黄:小学校、緑:公園、紫:管理センター)

2つの幹線道路がカーブして接近する地域中央の高台には、地域住民の交流施設となる会議室や図書コーナーなどからなるもみじ台管理センターや商業施設があります。

地域唯一の大型商業施設

もみじ台地域で唯一の大規模商業施設は、新札幌駅横に立派な自社ビルを持ち、厚別区内でしか店舗展開していない、かつては自社ブランド「ホクノー牛乳」を発売していたホクノースーパーです。

市営住宅団地

面積としてはもみじ台地域の20%を占める市営住宅ですが、実際に幹線道路を走るとどこまでも市営住宅団地が続くため、体感的には60%ぐらいが市営住宅団地のように感じられます。

熊の沢公園(自然林)

もみじ台地域にいくつかの公園がありますが、地域最大の公園が熊の沢公園です。公園として整備されている区画もありますが、ほとんどが自然林が占めており、住宅地造成前の森林の状態がそのまま残されています。

園内には木道が整備された水芭蕉の群生地もあります。

もみじ台地域の課題

もみじ台地域の課題については、札幌市が公開している以下の資料にも記載されています。

もみじ台まちづくりビジョン
https://www.city.sapporo.jp/atsubetsu/machi/momijidai/documents/r4momijidai_machivision.pdf

もみじ台地域まちづくり指針(案)
https://www.city.sapporo.jp/keikaku/kougai/momiji/documents/04_shishinan.pdf

ここでは札幌市の資料で深く触れられていない、3つの課題に絞って掘り下げてみます。

  • JR新札幌駅や地下鉄新さっぽろ駅へのアクセスが悪い
  • 公共交通が路線バスしかない
  • 曲がりくねった勾配のある道路が多い

■JR新札幌駅や地下鉄新さっぽろ駅へのアクセスが悪い

もみじ台地域はJR新札幌駅や地下鉄新さっぽろ駅まで直線距離は約1.6kmしか離れていませんが、道なりに移動する場合、(住宅地の生活道路を除き)南郷通または厚別青葉通を利用しなければなりません。

新札幌駅、新さっぽろ駅までの距離

その距離は、南郷通経由で約2.3km、厚別青葉通経由で約3.3kmとなります。また、厚別青葉通は一部対面2車線となっていますが、この区間が渋滞を誘発しているためラッシュ時では約20分ぐらいかかることがあります。

せっかくの新札幌駅に近いという利点が活かしきれていません。

■公共交通が路線バスしかない

もみじ台地域のピーク人口は北区あいの里とほぼ同じ2万人の人口がありましたが、近くにJR千歳線が通っているにもかかわらず、鉄道駅はなく長年の間、公共交通は路線バスだけになっています。

もみじ台地域からJR新札幌駅へのバス所要時間

さっぽろえきバスNaviで、もみじ台地域とJR新札幌駅や地下鉄新さっぽろ駅の所要時間を調べると、最短は〔循環新71〕もみじ台西2丁目線の16分、最長は〔新15〕もみじ台団地線の28分であることがわかりました。

あくまでこれは、複数の系統を利用可能なもみじ台地域の中央地区から新札幌への所要時間ですので、バス停まで徒歩10分+乗車25分かかるケースや、時間帯によっては最寄りバス停に停まるバスがないため20分以上も離れたバス停まで歩かなければバスを利用できないケースもあるようです。

■坂道とカーブした道路が多くて走りにくい

もみじ台地域は山林を切り開いた住宅団地あり、地域全域でかなりの高低差があるため、道路がそれなりに急な坂道となっています。

また、道なりにある程度の進める道路のほとんどがカーブしており、土地勘がない人が道なりに進むと目指していた方角とは見当違いの場所にたどり着いてしまいます。

主要道路(赤:4車線、緑:2車線)

また、幹線道路と並行する道路が存在していないため、幹線道路が渋滞したり通行止めになった場合は大きく迂回しなければなりません。

もみじ台地域の将来像を考える

もみじ台地域を再生するには、ニュータウン時代の遺産を捨てて、前述の3つの課題を解消しなければ、実質として市営団地が建て替えられるだけのつまらない街づくりになってしまうと考えます。

■対策しなければ悪化する思われること

  • バス利用客の減少とバス路線廃止や減便
  • 若年層人口の減少と学校統廃合による通学時間の増大
  • 高齢化の進行による買い物難民の増加
  • 市営団地老朽化による空室の増加

■今後の街づくりで必要と思われること

  • 新札幌とのアクセス強化
  • 自動運転バスに対応できる広い道路の整備
  • 複数の循環路線に対応できるような道路整備
  • JR新駅設置によるバス路線の短縮化

これらを実現するためには、もみじ台地域のみで実現することは困難と感じましたので、もみじ台地域とその周辺の将来像を考えてみました。

もみじ台地域の将来像

■新札幌へのアクセス道路の新設

新しい都市計画道路(仮称)新札幌通を新設して、もみじ台地域と新札幌駅前のダイレクトアクセスを実現することで新札幌駅との距離を縮めます。

■JR新駅の新設

せっかくJR千歳線が走っているのですから、JR千歳線の新札幌駅と上野幌駅の中間に請願駅(仮称)もみじ台駅を設置します。西側(青葉側)にも駅前広場を設けますが高低差があるため、星置駅のような構造になります。

新札幌駅と新駅、上野幌駅の駅間は札幌駅と桑園駅とほぼ同じ約1.6kmとなり、札幌市内としては妥当な駅間となります。

■道路の再構築

厚別東通の直線化、地域中央を横断縦断する道路新設、もみじ台通と厚別青葉通の線形変更して曲線道路の直線化、回遊可能な道路へ再構築を行います。

目指すべき街づくり

もみじ台地域の街づくりの方向性としては、これまでのようなベットタウンとしての閑静な住宅地だけではなく、鉄道駅があり、大型商業施設や商店街もあり、中高層マンションもあり、車も運転しやすくて回遊できる人口3万人規模の街を目指していくべきだと思います。

もみじ台地域が目指す将来の用途地域

もみじ台地域はベッドタウンとした街づくりが行われてきましたが、それとは一線を画した平岸地区や琴似地区、麻生地区にみられる、商業と住宅が混在した街、つまりその地域だけで一通りの生活ができることが可能な街を目指していきます。

一方で、厚別東通やもみじ台通の沿道はこれまで通り閑静な住宅街として維持していくことで、これまでのもみじ台地域らしさも残していきます。

取り込んでいくべきもの

次世代半導体メーカーであるラピダスが千歳市に次世代半導体工場を建設中であり、報道によればすでに複数の関連企業の進出も決定しているようです。

千歳市ではすでにマンションの新規着工が相次ぐなど、ラピダスや関連企業で働く従業員向けの住宅建設が急ピッチで進んでいるようですが、子供の教育を考えると、千歳や恵庭ではなく札幌に住居を構えたいという人も出てくると思われます。

もみじ台地区にJR新駅が設置されて新さっぽろ駅にもダイレクトアクセスになった場合、千歳市への通勤も電車で30分圏内ですし、JRや地下鉄で札幌市内への通学も可能なので、ラピダスや関連企業で働く従業員の居住先として候補になってくる可能性もあるのではないでしょうか。

最後に

冬から約半年あまり、もみじ台地区に何度も足を運びましたが、幹線道路の電柱は地中化され、広々とした風景が広がっているのですが、閉山した炭鉱の街のような雰囲気といいましょうか、どことなく活気がなく、切土擁壁が道路まで迫っているので幹線道路に面した路面店舗がないく、にぎわいのない住宅街になってしまっているのがとても残念だと感じました。

もみじ台地区の復活を願っています。

※使用している地図、航空写真、陰影起伏図、色別標高図は地理院タイルをを使用しています。

地理院タイル
https://maps.gsi.go.jp/development/ichiran.html

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