東4丁目通整備について

札幌市は「はぐぐみの軸」(大通)、「うけつぎの軸」(北3条通)、「にぎわいの軸」(駅前通)、「やすらぎの軸」(創成川通)、「いとなみの軸」(東4丁目通)を骨格軸として定めて街づくりを行っていますが、東4丁目通の「いとなみの軸」整備工事が本格的に始まりました。

東4丁目通整備の概要

東4丁目通は幅員20mで4車線の都市計画道路ですが、北3条通から北5条通にかけて狭幅区間、北1条通から北2条通がクランク状、北4条通から北5条通が狭隘となっており、改善が求められていました。

東4丁目通整備概要図
橙色:①道路空間の再分配、紫色:②クランク状道路の直線化、緑色:狭隘区間の拡幅

この整備により、上図の橙色の現状4車線区間の道路空間を再分配、紫色のクランク状道路区間を直線化、同、緑色の狭幅区間を幅員20mに拡幅します。

①道路空間の再分配

現状の幅員20m区間は、歩道2.5m×2、植樹帯1m×2、車道6.5m×2の4車線として整備されていますが、これを再分配により、歩道+植樹帯5m×2、車道5m×2の車線で再整備します。

道路空間の再分配

東4丁目通は東西線バスセンター前駅やサッポロファクトリーに隣接しており、大通から北1条区間は歩行者の通行量がとても多い区間でした。北4東6周辺地区再開発で移転新築された中央体育館により、さらに歩行者が増えたように感じます。

車道へ減らして歩道を広げる工事が進む東4丁目通

道路空間の再分配で歩道が広くなることで、誰もが安心して歩行することができるようになりそうです。

地上機器(トランス)を設置する工事に見えますので、電柱地中化も行われるものと思われます。

②クランク状道路の直線化

北1条通から北2条通の東4丁目通は、明治初期の札幌開拓時代から東側約20mにずれており、東4丁目通がクランク状となっています。

ここを通る路線バスも交差点手前は右車線で信号待ち、交差点内を斜めに進行して交差点を抜けた先は左車線を走るという危険な運転が目立つ交差点です。

用地買収が完了した北1条通のクランク状区間

平成中頃から東4丁目通のクランク解消が検討されていましたが、2017年に国土交通省から事故危険箇所に指定され、一気にクランク解消が進むことになりました。

クランク解消後の道路境界(予想)

直線化後の幅員も現状と同じ20mとなりますが、他区間と同様に歩道+植樹帯5m×2、車道5m×2の車線で整備されることになります。

③狭隘区間の拡幅

北4条通から北5条通は中央中学校に隣接しているにもかかわらず幅員が約11mしかなく、一部区間においては歩道の幅が70cn程度しかなくとても危険な状態になっています。

狭隘区間の道路拡幅(予想)

今回の整備により、この区間を歩道+植樹帯5m×2、車道5m×2の幅員20mに拡幅し、歩行者も安心して歩行できる区間として整備されることになります。

かつてこの狭隘区間の東4丁目通の沿道は、北4条にサッポロファクトリーの第3立体駐車場、北5条に第4駐車場が存在していました。

拡幅を見据えてオープンスペースとなっている敷地

2016年に第3駐車場が閉鎖され、TDY札幌コラボレーションショールームがオープンした際、将来的な東4丁目通の拡幅を見据えて道路用地となるTDY札幌コラボレーションショールーム敷地の一部がオープンスペースとして確保されています。

整備後の東4丁目通構造

今回の整備により現在4車線の道路が再配分により、対面2車線になってしまう区間ありますが、車道の幅員として10mが割り当てられます。

車道の幅員が10mであれば、車線数としては3車線分を確保することが可能となりまので、基本構造は路肩が2mの対面2車線ですが、主要な交差点には右折レーンが設定されるのではないかと思われます。

東4丁目通の右折レーン(予想)

右折レーンが設けられることで夏場はある程度スムーズな流れになると思われます。しかし、冬場においては、交通の流れが悪化して渋滞がひどくなる可能性があります。

整備後の東4丁目通で懸念されること

現状4車線の道路から片側1車線の対面通行になることで、整備前に比べて渋滞が発生しやすくなることが考えられますが、現状や数年先の課題を深掘りしてみます。

①サッポロファクトリー駐車待ち車列

サッポロファクリーの第1駐車場入口は北1条通(国道12号線)側にありますが、現状の東4丁目通の左車線が駐車場の入庫待ち車列により完全に占有されてしまい、交差点を左折する車は追い越し車線を走行して左折しなければならないほどの深刻な渋滞が発生しています。

左車線を占有するサッポロファクトリー第1駐車場入庫待ちの車列

この区間は東4丁目の整備により、クランク解消と直線化されますが、車線数は対面2車線となりますので、サッポロファクリー側と協議して抜本的な対策を実施しなければ、路肩が2mあるとはいえ、冬場は路肩が雪で塞がれてしまうので、交差点で左折すらできない状態に陥ってしまう可能性があります。

②周辺で相次ぐ再開発

東4丁目通の道路沿いや周辺では大型の再開発が進んでおり、これらが全て竣工すると東4丁目通の交通量が大きく増加すると予想されます。

近年の再開発(進行中・計画中・近年完了済)

東4丁目通沿いだけを見ても、北6東3丁目で延床5万㎡のカレス医療センター、北4東4では(仮称)サッポロ不動産開発株式会社 N4E4ビル、大通東4では北海道新聞社本社ビルの建設、現在でも沿道ビルの解体が進んでいます。

これら再開発の竣工により交流人口が増加、整備前に比べて交通量も大きく増加する可能性があります。

③碁盤の目の東端道路としての役割

札幌市の中心部は碁盤の目という印象が強いかもしれませんが、創成川の東側は開拓時代から工業局や物産局が管理する工場地帯であり、この東4丁目通が碁盤の目の東端道路となっており、JRの北側と南側の碁盤の目を平面交差で移動可能な東端の道路となっています。

東4丁目通の位置づけ

東4丁目通は旭川市や道北を結ぶ国道12号線、室蘭市や道南を結ぶ国道36号線にダイレクトでアクセスできる東端道路でもあります。

主要国道にダイレクトアクセスできる利便性に加え、クランク状道路の直線化、狭隘区間の拡幅により走りやすくなることで、整備前に比べて交通量が大きく増加する可能性があります。

道路空間の再分配の是非について

歩道を広げて歩行者が安心できる空間を整備することは、とても正しい方向だと感じます。しかし、それが札幌市の骨格軸に指定されている東4丁目通の車線数を減らして実現するべきかどうかについては大いに議論の余地があると思われます。

札幌都心部では駅前通や西2丁目通をはじめ、車線数を減らして歩道を広げた市道がいくつもありますが、交通の流れは整備前に比べて明らかに悪化しています。

札幌市は豪雪地帯であることから、冬季間の道路状況悪化が常態化しており、車線数の縮小はバス運行に大きな問題を引き起こしていますが、少子高齢化による除雪車のオペレータ不足が深刻になりつつあり、近い将来には現状のような除雪体制が維持できなくなり、冬季間の道幅がさらに狭くなってしまう可能性があります。

このような中で碁盤の目道路で南北に直進できる東端の道路である東4丁目通の交通の流れを悪化させるような事業がはたして妥当なのでしょうか。

クランク状道路の解消先行ではだめなのか

たとえば、東4丁目通の幅員を22mに定め、まずは用地買収済みの区間であるクランク状道路を解消するだけではだめだったのでしょうか。

先行整備区間(案)

歩道の幅員を現在の3.5m(植樹帯を含む)から1m広げた4.5mとした幅員22mの4車線道路とすることで、歩行者の安全と4車線道路を維持することができます。

再開発を誘導しながら用地買収を行い、新幹線延伸の2030年末を目処に全区間を幅員22mで整備することも可能だったと思われます。

東4丁目通の沿道事情

東4丁目通を幅員22m拡幅する場合は用地買収が必要になりますが、東4丁目通沿いの状況がどうなっているのかまとめました。

東4丁目通沿いの土地利用状況
橙色:建物未建築、赤色:市有地、緑色:再開発中

①青空駐車場(マンションの駐車場)
②市有地(中央中学校)
③再開発中(旧サッポロファクトリー第4駐車場)
④オープンスペース(旧サッポロファクトリー第3駐車場を道路予定地を避けて再開発済み)
⑤青空駐車場など(社用の駐車場)
⑥サッポロファクトリーレンガ館前広場(イベント会場・タクシーポートなど)
⑦クランク状道路解消のために用地買収
⑧青空駐車場など(マンションの駐車場)
⑨青空駐車場など(社用の駐車場)
⑩青空駐車場など(店舗の駐車場)
⑪閉鎖されたビル(丸美ビル)
⑫市有地(都市公園)
⑬暫定青空駐車場(ビル解体跡地)
⑭青空駐車場(月極駐車場)

地権者や利用者の事情を一切考慮せず、あくまで物理的に幅員22mへの拡幅する可能性について考えてみます(現実はすんなり解決できる問題ではありません)。

北3条通から北4条通の狭隘区間

②の市有地は中央中学校ですが、十分なセットバックで校舎が建てられているため、一部を道路用地とすることは可能です。

③は札幌市と「まちづくりパートナー協定」を締結しているサッポロホールディングス株式会社の関連会社による再開発であり、事前に相談することで、幅員20mへの拡幅ではなく22mでの拡幅を前提とした再開発に理解が得られた可能性があります。

④についてはすでに幅員20mを前提とした位置に壁面が後退されており、目視レベルによると更に1m程度の拡幅が可能ではないかと思われます。

北2条通から北3条通区間

⑥はサッポロファクトリーのレンガ館の広場となりますが、ビヤガーデンや各種イベントが開催されています。先述の通り、サッポロホールディングス株式会社は「まちづくりパートナー協定」を締結していることから、1m程度の用地買収に理解が得られる可能性はあると思われます。

向い側もサッポロファクトリーの敷地であり、サッポロファクトリーホールやホテルクラビーサッポロ(ホテル創成札幌 Mギャラリーとして改装中)目視レベルでは道路境界から1.5m程度離れて建物が建ってるので用地買収は可能と思われます。

大通から北1条通区間

⑧、⑨、⑩、⑭は青空駐車として分類していますが、コインパーキングではないので、用地買収にすぐに理解が得られるかどうかはわかりません。

⑫は市有地の「あそぶべ公園」であり、1m程度の後退は可能だと思われます。

⑬はここ数年に解体されたビル、⑪はビル出入口の郵便受けにすべてテープが貼られた状態のビルで、近く解体される可能性があります。

この区間はビルの数が多く地権者も多いと予想されるため、用地買収は難航する可能性があります。

まとめ

東4丁目通のクランク状道路の解消、狭隘区間の拡幅、歩道の拡幅には賛成ですが、これまでの理由により現状4車線の車道を対面2車線に減らすことには反対です。

まずは、都市計画として幅員を22mに決定し、クランク状道路の解消を先行すべきです。東4丁目通沿いの土地利用状況から北2条通から北5条通の区間については、幅員22mとするための用地買収をはしやすい状況にあります。

大通から北1条通の区間は地権が多く用地買収に時間がかかるため、東4丁目通としての整備は行わず、地下鉄バスセンター前駅からサッポロファクトリーの約150mを地下歩行空間を整備すべきではないでしょうか。

バスセンター前駅から地下歩行空間を整備することで、サッポロファクトリーの館内通路を通り、北4東6周辺地区再開発で誕生した空中歩廊を通じで中央体育館まで雨風に当たらず行き来できるようになります。

郊外の住宅街ならまだしも、再開発が盛んで人口が急増している創世イースト地区の基軸道路の車線数を減らすような事業が行われる事に大きな疑問を感じます。

宮の森・北24条通のその先へ

建設が始まってから10年以上経過した2023年8月4日、豊平川に架かる北24条桜大橋が開通し、北24条・宮の森通が4車線で白石区まで延伸されました。

北24条桜大橋開通後の課題

北24条桜大橋の開通により、環状通に架かる環状北大橋、札幌新道に架かる豊水大橋の渋滞解消が期待される一方で、延伸された北24条・宮の森は南7条・米里通との交差点で止まっていることで、この地域で唯一の幹線道路で南7条・米里通の交通量が増加して、新たな渋滞スポットが生じようとしています。

そこで、北24条桜大橋を活かすべく、北24条・宮の森通をさらに延伸するならばどのルートが妥当なのかを考えてみます。なお、今回は地形や地割りを考慮して現実的な路線で考えています。

なお、延伸される北24条・宮の森通の代表幅員は25m、車線数は4車線を想定しています。

A案 13号幹道線と接続

A案 13号幹道線へ接続

北24条・宮の森通を北郷通の13号幹道線の終点辺りに三叉路として延伸し、白石地区や北郷地区や川下地区、山本地区との交通を円滑にします。また、北郷通を通じて厚別通、札幌新道へ交通を分散させることも可能です。

B案 北郷通と接続

B案 北郷通に接続

北24条・宮の森通を北郷通に接続して、白石・北郷地区との交通を円滑化するとともに、環状通を補完する役割も担います。

北24条・宮の森通(の西側)は道道89号札幌環状線として札幌市が管理していますので、環状道路としての一役を担うのは正しい姿かもしれません。

C案 札幌新道と接続

C案 札幌新道へ接続

北24条・宮の森通を札幌新道(国道274号)に接続します。札幌新道で渋滞が常態化している伏古~北郷区間を迂回する役割を重視しています。

道央自動車道の北郷ICに近いことから、北24条・宮の森通と北郷ICのアクセス向上が期待できます。

D案 厚別通と接続

D案 厚別通に接続

北24条・宮の森通を厚別通と接続して環状通を通らずに月寒地区、南郷地区や厚別地区を円滑に往来ができるようにします。

旧月寒川を暗渠にしてその上に北24条・宮の森通を新設が、本音としては丁字路接続ではなく、旧月寒川の流路そのままに、北24条・宮の森通と厚別通を接続するの最善だと思うのですが、現実的には難しそうです。

さらなる延伸を

A案~B案の中で、そこからさらに既存道路を利用しながら地域間の往来の利便性が向上すると思われる案をいくつか考えてみました。

A案+延伸

A案+延伸

A案から南側へ延伸して南郷南1号線と接続します。南郷南1号線はJR白石駅の東側を走るJR線の南北を結ぶ主要道路ですが、道幅が狭くJR線の踏切により、主要道路でありながらも渋滞が多発する区間です。

この南郷南1号線を幅員25mに拡幅してJR線を立体交差化するとともに、北24条・宮の森通と接続し、JR白石駅と札幌ICの接続性を大幅に向上させます。

C案+延伸

C案+延伸

C案から更に東側へ延伸して、川下地区や山本地区を横断してもみじ台通に接続します。接続先の小野幌146号線は幅員25mの4車線として整備されながらも行き止まりとなっている盲腸路線です。

※小野幌146号線と山本通を結ぶ、2車線の道路として山本小野津幌川沿線の整備が始まりました。

川北地区や川下地区、山本地区は広大な市街化調整区域にあるためか、東西や南北を直進できる幹線道路の整備が大きく遅れています。さらに(隣接する江別市を含め)U字に市街化が進んでいるため、東区や白石区と厚別区(江別市の大麻地区)を往来する場合、札幌新道や厚別通、北郷通を大きな弧を描くように遠回りするしかありません。

この道路整備により、厚別地区と東区や白石区の短絡され、厚別通や札幌新道、北郷通への交通集中が大きく改善されると思われます。

最後に

世の中は大物流時代であり、これまで以上に道路の重要性が増しています。特に札幌市は豪雪地帯であるため、車道の車線数(または幅員)がとても重要であり、夏場の交通量だけで車線数を決定すると、札幌市の除雪方式の甘さから、冬場は道路が大渋滞してしまいます。

近年は札幌市に隣接する北広島市や江別市、石狩市で工業団地の造成が活発になっており、大型物流倉庫の立地も急増中です。

10年以上かかってようやく開通した北24条桜大橋ですが、橋だけ架けて終わりではなく、北24条桜大橋を活かす道路づくりが急がれます。

※地図は、地理院タイル(淡色地図)を使用しています。
https://maps.gsi.go.jp/development/ichiran.html