北5西5街区の再開発を考える

JR札幌駅のすぐ西側の北5西5街区でいくつか動きが出てきました。

竹中工務店が所有する大通東1の土地と北5西5の市有地を交換する協議が行われていましたが、2022年末に基本合意したことが報じられました。

北5西5と大通東1の土地交換で基本合意 札幌市と竹中工務店
https://e-kensin.net/news/153598.html

さらに北5西5に建つセンチュリーロイヤルホテルが老朽化とビルを所有する住友生命札幌ビルとの賃貸契約満了により2024年5月をもって閉館することが報じられました。

札幌のセンチュリーロイヤルホテル、24年5月閉館
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOFC0716I0X01C22A2000000/

竹中工務店が所有することになる土地は北5西5街区整備事業として20年間の定期借地権方式により事業化された土地で、2025年で定期借地契約が満了します。

北5西5街区

センチュリーロイヤルホテルが24年5月で閉館、竹中工務店に所有が移される土地は2025年で定期借地期間が満了、その西側にはJR北海道が所有するビルが2棟となると、2030年の新幹線延伸に向けて一気に北5西5街区一体再開発となりそうな雰囲気がありますが、実際どうなるか考えてみます。

現在の北5西5街区

まずは、現在の北5西5街区にどのようなビルが建っているのか、1つずつ確認していきます。

北5西5街区に建つビル

住友生命札幌ビル(センチュリーロイヤルホテル)

1973年竣工の札幌初の超高層ビルで、センチュリーロイヤルホテルしては2024年5月の閉館が決まりましたが、住友生命札幌ビルとしてどうなるか正式な発表はありません。

住友生命、札幌ビルの建て替えを検討 入居ホテル24年5月閉館
https://e-kensin.net/news/153517.html

JR55SAPPORO

2006年に竣工した立体駐車場を中心とした飲食店との複合ビルでJR北海道が所有しているビルで、隣接するsapporo55ビルと2階で接続されています。

JR北海道本社西ビル

築年数は不明ですが、昭和54年前後に竣工したと記憶しています。2022年に外壁の補修工事を行っています。

JR北海道は2019年に札幌駅周辺に点在するJR北海道グループ所有のビルを集約し、桑園駅の本社ビル隣接地に地上55m延べ約1万2000㎡のビルを建設する計画を発表しましたが、経営再建中にもかかわらず新ビルを建設することに対して非難が集中して、最終的に建設を断念することが発表されています。

信金中央金庫ビル

2000年に竣工した地上11階 地下1階建て、延べ面積約9,000㎡のオフィスビルです。

sapporo55ビル

20年間の定期借地権ある市有地に2005年に竣工したビルで、大通から移転した紀伊國屋書店や小樽商科大学サテライト、北海道教育大学サテライト、学習塾、オフィス等が入居しています。

大通東1の市有地と土地を交換することなり、竹中工務店が土地を所有することになりました。

北5西5街区の一体再開発の可能性はあるか

北5西5街区で一体再開発があるか考えてみます。

  • 信金中央金庫ビルは築20年程度とまだ新しいので、すぐに建て替える可能性は低いと考えられます。
  • sapporo55の土地は竹中工務店所有となり、定期借地権が消滅して2025年までに原状回復して更地にする必要がなくなりました。
  • JR55SAPPOROは築17年程度なのでまだまだ建て替えの時期ではないと思われます。
  • JR北海道本社西ビルは桑園に予定していたの新ビル計画を断念したことから、急いで単独で建て替えするメリットが少なくなったと考えられます。
  • 住友生命札幌ビルはセンチュリーロイヤルホテルが2024年5月で閉館することが正式発表され、近いうちに建て替える可能性が高いと思われます。

これらをまとめると、2030年までに北5西5街区で再開発があるとすれば、センチュリーロイヤルホテルが閉館する住友生命札幌ビル単独での再開発となる可能性が濃厚だと思われます。

北5西5北街区一体再開発?

住友生命札幌ビル以外のビルはいつ再開発されるか考えてみます。

  • sapporo55は2045年に築40年を迎えます。
  • JR55SAPPOROは2046年に築40年を迎えます。
  • JR北海道本社西ビルは2030年には築50年前後を迎えます。
  • 信金中央金庫ビルは2045年には築45年を迎えます。

これらから考察すると、2045年頃から建て替えの検討に入るビルが増えると考えられます。

北5西5街区の再開発予想

JR北海道本社西ビルは、一足早く2030年頃に建て替え期を迎えると思われますが、隣接するJR北海道所有のJR55SAPPOROとの一体再開発となる可能性もあると思われます。

個人的には2045年頃に北5西5北街区で一体再開発となることを期待してしまいます。

もし北5西5が一体再開発されたら?

北5西5街区全体の一体再開発の可能性が極めて低くなりましたので、ここからは個人的な趣味として、もし北5西5街区が2030年を目処に信金中央金庫ビル以外で一体再開発されたら?どのようなビルになるのかを考えてみました。

再開発ビルの概要

再開発ビルは地上39階、地下4階建て、低層部は商業施設と西側にホテルエントランスとホール、中層部はオフィス、高層部はホテルで、基壇部の高さは36m、西側のホテルエントランスとホール部は27m、地下2階から地上6階まで商業施設、7階から23階まではオフィス、24階から39階まではホテルとなります。

配置図・断面図
南西方向から

地下1階から地上2階は通路状のアトリウム空間となっており、オープンスペースの敷地内貫通路として施設の利用者や市民が利用できるようになります。

北西方向

西側はホテルのエントランスやホールとなります。敷地内には屋根で覆われた歩道状空地として季節や天候を問わず安心で快適な歩行空間となっています。

北東方向

新幹線高架橋の建設により側道が対面通行から東進の1車線に変更されるますので、高架橋の圧迫感を広いオープンスペースで低減させます。

北西から

オフィス棟の高さは約125mで、北西から見るとスリムなビルに見えるようになっています。

南東から

南口駅前広場からの眺望を考慮してホテルが入る高層部は北側に配置されています。ホテルからは広大な北海道大学キャンパスを堪能することができるでしょう。

南東から

オフィス棟がL字型に配置されているのがよくわかります。これが実際の計画のだったら、景観を理由に突き出したオフィス部の高さを80m程度に低く抑えるような要望が出るかもしれません。

北東から

北東から見ると中層部は北洋大通センタービルの雰囲気に似てしまいました。真北から見ると大通西4再開発ビルと雰囲気に近いかもしれません。

最後に

北5西5街区は住友生命札幌ビル単独で再開発される可能性が濃厚となり、街区全体の再開発の可能性は極めて低くなりましたが、2045年頃に北街区で一体再開発の可能性もあるかもしれません。

大通西4のように半街区でも容積緩和があれば185mのビルを建設することも不可能ではありませんので、2045年に期待することにします。

大通西4再開発を考える

大通西4丁目で地上34階地下3階建て最高高さ地上185mの再開発計画が発表されました。

(仮称)大通西4南地区第一種市街地再開発事業 都市計画手続きについて
https://www.fse.or.jp/files/lis_tkj/22071288031.pdf

出典:平和不動産

この計画に対して、大通公園沿いに185mという高層ビルを建設すると大通公園がビルの影になってしまい、景観審議会や景観アドバイスや景観アドバイス部会の段階で大通公園が影にならないようにビルの高さを低く抑えるような勧告があるのではないかという心配が掲示板に寄せられました。

景観審議会とは?

札幌市景観審議会は、札幌市景観条例に基づき設置された良好な景観の形成に関する重要事項を調査・審議するための市長の諮問機関となります。

札幌市景観審議会
https://www.city.sapporo.jp/keikaku/keikan/singikai/singikai.html

景観審議会の権限として、「景観法に基づく勧告、変更命令等」が可能となっています。

景観アドバイス部会とは?

一定の基準を満たす建築計画において、その事業者と意見交換を行うため、札幌市景観審議会に設置された専門部会で、計画の早い段階で専門家がアドバイスを行う制度です。

景観アドバイス部会
https://www.city.sapporo.jp/keikaku/keikan/singikai/keikan_advice/advicebukai.html

どのような内容が協議されるかについて、環境プレ・アドバイス手続き資料によると、札幌市の景観形成基準や、計画地の歴史、自然環境、周辺の街並みなどの地域特性を踏まえ、どのような景観上の配慮をして設計することが望ましいか等について、専門家(景観アドバイス部会委員)を交え協議します。

景観プレ・アドバイスの手引き
https://www.city.sapporo.jp/keikaku/keikan/guideline/documents/01-11.pdf

ビル影の模擬実験

まずは、大通西4に185m、大通西3に100m、大通西2に60m,大通西1に45mのビルがあると仮定して、08:00~16:00の時間帯におけるビル影がどのようになるか模擬実験してみました。

秋分

秋分の日のビル影

一目瞭然の結果となりましたが、185mのビル影は大通公園全体に影が落ちます。しかしながら、100mビルも同じく大通公園全体に影が落ち、ビル影だけに注目すると185mと100mのビルに大きな差はないということがわかりました。

夏至

夏至のビル影

札幌市は北緯41度と高緯度に位置するため夏至の南中高度は約70度もあります。100mのビルでも大通公園の一部に影が落ちますが、185mのビル影では大通公園の約半分ほどにビルの影が落ちる結果となりました。

都合のいい言い方をすれば、最近の札幌は気象変動の影響を受け、夏の最高気温が高くなっていますので、ビルの日影は熱中症の対策として有効なのではないでしょうか。

大通交流拠点地区の高さ規制

札幌都心部には高度制限(いわゆる高さ規制)はありませんが、今回の大通西4を含む大通と駅前通が交差する四つ角は「大通交流拠点地区」地区計画として60mの高さ制限が設定されています。

大通西3の「たくぎん」が再開発されることになり、60mの高さ制限が100mに緩和されましたが、その過程について、平成19年の市議会議事録を確認したところ、次のような趣旨の反対意見が複数ありました。

大通公園は開放感があり、テレビ塔の展望台は90メートルの位置にある。その至近距離に100メートルのビルが建つということは景観を遮ったり、日影がこれ以上広がるので、たとえ大通や駅前通からセットバックしても高さの制限を100メートルへ緩和ことに反対する。

この反対意見に対して、都市計画部長から次のような趣旨の答弁がありました。

60メートルを超える部分は高層部分をセットバックして圧迫感を抑える、今回この条例を定めないと無秩序に高層ビルが建って大通公園の環境が守られない。この地域に求められる高度利用を考慮すると100メートルの高さ規制は妥当と考える。

大通西3再開発において60mから100mへの緩和でさえ、このような反対意見が出されたのに、その斜め向かいの大通西4に100mを大幅に上回る185mという高さの審議となると、どれ程の(再開発の意味、地区の役割を理解しない)反対意見が出るか、またそれに対してどのような答弁となるのかが注目されます。

景観ってなんでしょう?

大通公園は「日本の都市公園100選」や「都市景観100選」にも選定され、雪まつり会場、オータムフェスト会場、2020東京オリンピックのマラソンのスタート、ゴール地点としても全国的に知られています。

あくまで個人的なイメージとしては、広く開放感のある大通公園沿道に200m程度のビルが建ってもいう程の圧迫感はなく、むしろ大通や創成川通のような幅の広い道路沿に超高層ビルを集約していくことで景観が守られるように感じます。

現在の大通沿いは道路境界ギリギリに45mや60mのビルが隙間なく並び、ビルとビルの隙間から日が射すこともないような風景こそ景観や日照を阻害しているのではないかと感じます。

また、建築当時はそれが普通ではあるものの、低層階の階高が低く窮屈なイメージのビルが多いのも印象であり「大通公園」だけでなく、南大通のイメージアップも戦略として必要と感じます。

今回の大通西4の再開発ビルは、歩道からセットバックされ、基壇部はガラスカーテンウォールで高さも低く抑えられ歩道からの圧迫感を抑える工夫や賑わい創出も考慮されています。また、角が丸い高層部は大通公園に新しい風を吹き込むことでしょうし、高層棟のガラスカーテンウォールに映る大通公園のシルエットもとても楽しみです。

今回の模擬実験で大通西4の再開発ビルの高さが175m(最高高さ185m)から、例えば10m、20m低くしたところで大通公園への日照に大きさな変化はなく、100mのビルと大差ないことがわかりました。環境アセスメント対象ではありませんので、このままの計画で都市計画が決定することを願います。