もみじ台地域の街づくりついて

札幌市厚別区のもみじ台地域は、1970年代前半に未開の森林に新たな住宅地を造成する「東部地域開発基本計画」地域よりさらに東部の江別市や北広島市との境界に造成された約242万㎡に及ぶ市営住宅と分譲住宅からなる住宅団地です。

もみじ台地区(赤色)

もみじ台地域は昭和40年に開発が決定して造成されましたが、昨今では同時期に造成された周辺のニュータウンと同じような問題を抱えており、札幌市が「もみじ台地域まちづくり指針」を策定して、新たな街づくりが検討されています。

今回はもみじ台地域の課題確認と個人的な展望を考えていきますが、札幌市が示した街づくりの方向と同じ視点では意味がありませんので、いつもながらの大胆な再生案を考えてみます。

もみじ台地域の衛星写真

もみじ台地域に接続する幹線道路

もみじ台地域の東部や北部は森林で覆われており、もみじ台地域と接続する南郷通、もみじ台通、厚別青葉通については、もみじ台地域で行き止まりとなります。

もみじ台地域に接続する幹線道路(実線:4車線以上、破線:2車線)

もみじ台地域を東西に移動する主要道路は南郷通と厚別青葉通しかなく、この2つの道路に交通が集中してしまいます。また、青葉地区で厚別青葉通が2車線になっており、この部分がネックとなり時間帯によっては渋滞が状態化しています。

南北への移動は4車線道路の厚別東通、もみじ台東1号線直線で比較的移動しやすそうに見えますが、もみじ台地域が丘陵地帯に造成された団地ということでかなりの高低差があります。

もみじ台地域の坂道

道路の勾配とカーブという組み合わせは冬道運転に慣れているドライバーにとっても慎重に運転しなければならず、足腰の弱い高齢者にとっても大きなハンデとなります。

もみじ台地域の陰影起伏図

もみじ台地域の陰影起伏図を見てみると、土地起伏に合っていない道路で切土・盛土されており、擁壁で支えられてた構造になっているのがよくわかります。

もみじ台地域の幹線道路

もみじ台地域の主要道路はニュータウンによく見られる、車のスピードを抑制しやすい曲線道路で構成されています。

もみじ台地域の主要道路(黄:4車線、緑:2車線)

なかでも、もみじ台地域を縦断する厚別東通はカーブでもみじ台地域の中央地区を経由する線形のため、主要国道からもみじ台地区を通過する大型トラックなども大きく迂回することになってしまいます。

また、同じくニュータウンによくある構造ですが、幹線道路と接続している住宅街の生活道路は、そのまま内部に直進できないように、車両通行止めになっている道路が多く見られます。

住宅地にある車両通行止め道路

一部の地図では車両通行止めではなく、車両も通行可能な隘路として表現されているため、土地勘がなくナビゲーションを頼りにしていると目的地にたどり着くのに苦労するかもしれません。

もみじ台地域の土地利用

もみじ台地域は市営住宅と戸建て住宅で構成されていますが、昭和40年中頃から昭和60年にかけて建設された市営住宅は、もみじ台地域全体の約20%を占めています。

市有地
(橙:市営住宅、青:中学校、黄:小学校、緑:公園、紫:管理センター)

2つの幹線道路がカーブして接近する地域中央の高台には、地域住民の交流施設となる会議室や図書コーナーなどからなるもみじ台管理センターや商業施設があります。

地域唯一の大型商業施設

もみじ台地域で唯一の大規模商業施設は、新札幌駅横に立派な自社ビルを持ち、厚別区内でしか店舗展開していない、かつては自社ブランド「ホクノー牛乳」を発売していたホクノースーパーです。

市営住宅団地

面積としてはもみじ台地域の20%を占める市営住宅ですが、実際に幹線道路を走るとどこまでも市営住宅団地が続くため、体感的には60%ぐらいが市営住宅団地のように感じられます。

熊の沢公園(自然林)

もみじ台地域にいくつかの公園がありますが、地域最大の公園が熊の沢公園です。公園として整備されている区画もありますが、ほとんどが自然林が占めており、住宅地造成前の森林の状態がそのまま残されています。

園内には木道が整備された水芭蕉の群生地もあります。

もみじ台地域の課題

もみじ台地域の課題については、札幌市が公開している以下の資料にも記載されています。

もみじ台まちづくりビジョン
https://www.city.sapporo.jp/atsubetsu/machi/momijidai/documents/r4momijidai_machivision.pdf

もみじ台地域まちづくり指針(案)
https://www.city.sapporo.jp/keikaku/kougai/momiji/documents/04_shishinan.pdf

ここでは札幌市の資料で深く触れられていない、3つの課題に絞って掘り下げてみます。

  • JR新札幌駅や地下鉄新さっぽろ駅へのアクセスが悪い
  • 公共交通が路線バスしかない
  • 曲がりくねった勾配のある道路が多い

■JR新札幌駅や地下鉄新さっぽろ駅へのアクセスが悪い

もみじ台地域はJR新札幌駅や地下鉄新さっぽろ駅まで直線距離は約1.6kmしか離れていませんが、道なりに移動する場合、(住宅地の生活道路を除き)南郷通または厚別青葉通を利用しなければなりません。

新札幌駅、新さっぽろ駅までの距離

その距離は、南郷通経由で約2.3km、厚別青葉通経由で約3.3kmとなります。また、厚別青葉通は一部対面2車線となっていますが、この区間が渋滞を誘発しているためラッシュ時では約20分ぐらいかかることがあります。

せっかくの新札幌駅に近いという利点が活かしきれていません。

■公共交通が路線バスしかない

もみじ台地域のピーク人口は北区あいの里とほぼ同じ2万人の人口がありましたが、近くにJR千歳線が通っているにもかかわらず、鉄道駅はなく長年の間、公共交通は路線バスだけになっています。

もみじ台地域からJR新札幌駅へのバス所要時間

さっぽろえきバスNaviで、もみじ台地域とJR新札幌駅や地下鉄新さっぽろ駅の所要時間を調べると、最短は〔循環新71〕もみじ台西2丁目線の16分、最長は〔新15〕もみじ台団地線の28分であることがわかりました。

あくまでこれは、複数の系統を利用可能なもみじ台地域の中央地区から新札幌への所要時間ですので、バス停まで徒歩10分+乗車25分かかるケースや、時間帯によっては最寄りバス停に停まるバスがないため20分以上も離れたバス停まで歩かなければバスを利用できないケースもあるようです。

■坂道とカーブした道路が多くて走りにくい

もみじ台地域は山林を切り開いた住宅団地あり、地域全域でかなりの高低差があるため、道路がそれなりに急な坂道となっています。

また、道なりにある程度の進める道路のほとんどがカーブしており、土地勘がない人が道なりに進むと目指していた方角とは見当違いの場所にたどり着いてしまいます。

主要道路(赤:4車線、緑:2車線)

また、幹線道路と並行する道路が存在していないため、幹線道路が渋滞したり通行止めになった場合は大きく迂回しなければなりません。

もみじ台地域の将来像を考える

もみじ台地域を再生するには、ニュータウン時代の遺産を捨てて、前述の3つの課題を解消しなければ、実質として市営団地が建て替えられるだけのつまらない街づくりになってしまうと考えます。

■対策しなければ悪化する思われること

  • バス利用客の減少とバス路線廃止や減便
  • 若年層人口の減少と学校統廃合による通学時間の増大
  • 高齢化の進行による買い物難民の増加
  • 市営団地老朽化による空室の増加

■今後の街づくりで必要と思われること

  • 新札幌とのアクセス強化
  • 自動運転バスに対応できる広い道路の整備
  • 複数の循環路線に対応できるような道路整備
  • JR新駅設置によるバス路線の短縮化

これらを実現するためには、もみじ台地域のみで実現することは困難と感じましたので、もみじ台地域とその周辺の将来像を考えてみました。

もみじ台地域の将来像

■新札幌へのアクセス道路の新設

新しい都市計画道路(仮称)新札幌通を新設して、もみじ台地域と新札幌駅前のダイレクトアクセスを実現することで新札幌駅との距離を縮めます。

■JR新駅の新設

せっかくJR千歳線が走っているのですから、JR千歳線の新札幌駅と上野幌駅の中間に請願駅(仮称)もみじ台駅を設置します。西側(青葉側)にも駅前広場を設けますが高低差があるため、星置駅のような構造になります。

新札幌駅と新駅、上野幌駅の駅間は札幌駅と桑園駅とほぼ同じ約1.6kmとなり、札幌市内としては妥当な駅間となります。

■道路の再構築

厚別東通の直線化、地域中央を横断縦断する道路新設、もみじ台通と厚別青葉通の線形変更して曲線道路の直線化、回遊可能な道路へ再構築を行います。

目指すべき街づくり

もみじ台地域の街づくりの方向性としては、これまでのようなベットタウンとしての閑静な住宅地だけではなく、鉄道駅があり、大型商業施設や商店街もあり、中高層マンションもあり、車も運転しやすくて回遊できる人口3万人規模の街を目指していくべきだと思います。

もみじ台地域が目指す将来の用途地域

もみじ台地域はベッドタウンとした街づくりが行われてきましたが、それとは一線を画した平岸地区や琴似地区、麻生地区にみられる、商業と住宅が混在した街、つまりその地域だけで一通りの生活ができることが可能な街を目指していきます。

一方で、厚別東通やもみじ台通の沿道はこれまで通り閑静な住宅街として維持していくことで、これまでのもみじ台地域らしさも残していきます。

取り込んでいくべきもの

次世代半導体メーカーであるラピダスが千歳市に次世代半導体工場を建設中であり、報道によればすでに複数の関連企業の進出も決定しているようです。

千歳市ではすでにマンションの新規着工が相次ぐなど、ラピダスや関連企業で働く従業員向けの住宅建設が急ピッチで進んでいるようですが、子供の教育を考えると、千歳や恵庭ではなく札幌に住居を構えたいという人も出てくると思われます。

もみじ台地区にJR新駅が設置されて新さっぽろ駅にもダイレクトアクセスになった場合、千歳市への通勤も電車で30分圏内ですし、JRや地下鉄で札幌市内への通学も可能なので、ラピダスや関連企業で働く従業員の居住先として候補になってくる可能性もあるのではないでしょうか。

最後に

冬から約半年あまり、もみじ台地区に何度も足を運びましたが、幹線道路の電柱は地中化され、広々とした風景が広がっているのですが、閉山した炭鉱の街のような雰囲気といいましょうか、どことなく活気がなく、切土擁壁が道路まで迫っているので幹線道路に面した路面店舗がないく、にぎわいのない住宅街になってしまっているのがとても残念だと感じました。

もみじ台地区の復活を願っています。

※使用している地図、航空写真、陰影起伏図、色別標高図は地理院タイルをを使用しています。

地理院タイル
https://maps.gsi.go.jp/development/ichiran.html

丘珠空港滑走路延伸について

札幌市は平成28年から市民アンケート、識者による検討会議、市民ワークショップ、市民説明会、地域住民説明会にて丘珠空港の利活用を検討し、丘珠空港の滑走路延伸を計画してきましたが、2023年7月下旬に、滑走路延伸の供用開始は2030年を目指すことを明らかにし、国に要望書を提出しました。

丘珠空港(札幌飛行場)

丘珠空港の滑走路延伸についての経緯は、札幌市のページにまとめられています。

丘珠空港の利活用検討
https://www.city.sapporo.jp/shimin/okadama/rikatsuyo/rikatsuyokento.html

これまでの丘珠空港の動きをふりかえりながら、気になる部分を考えてみます。

丘珠空港のふりかえり

滑走路の変遷

あまり知られていませんが、丘珠空港の正式名称は札幌飛行場であり、昭和19年まで札幌飛行場は北24条西8丁目付近にありました。

昭和17年に現在の位置に新飛行場の建設がはじまり、昭和19年に完全移転しています。

滑走路の変遷

昭和19年の移転当初の滑走路長は1000m、昭和31年の旅客機運行に合わせて1200m、昭和42年に1400m、平成16年に1500mと滑走路が少しずつ延伸されてきました。

YS-11退役によるジェット化検討

平成4年、丘珠空港に就航していた国産旅客機YS-11の退役により、滑走路を2000mに延伸してB737-500ジェット機を導入する検討が進められましたが、平成8年に住民の反対や、新千歳空港との役割分担などから、ジェット機ではなくプロペラ機での運用を継続する方針が決定し、滑走路を1500mへ延伸、滑走路幅を45mへ拡幅する方針が決定されました。

丘珠空港緑地公園の造成

平成11年に入ると「丘珠空港周辺のまちづくり構想」を策定し、丘珠空港周辺の約55haを買収して、丘珠空港緑地公園を整備することが発表されました。

丘珠空港緑地公園

この丘珠空港緑地公園については構想発表当初から、将来的に滑走路を2000mに延伸する際の空港用地として噂されていました。

丘珠空港緑地公園は滑走路の北西、北、南東に広がる公園で、大型遊具、展望ステージ、ラニングコース、ノルディックコース、18ホールのパークゴルフ場など整備されています。

人工の丘(築山)から丘珠空港のエプロンを望む

広場には約4mの人工の丘(築山)が整備されており、南西側の公園からは丘珠空港のエプロンを間近に望むことができます。

平成15年には丘珠空港の滑走路の1500mへの延伸、滑走路幅の45mへの拡幅、エプロンの拡張が完成します。

ANAの丘珠路線の撤退

平成21年、ANA(A-net)は丘珠空港に就航する5路線すべてを新千歳空港に移転することを発表し、道や札幌をと協議を始めましたが、ANAが選定したボンバルディア社DHC8-Q400を導入する場合、冬季間の安全な離着陸のためには、滑走路長を1500mから更に延伸が必要とのことで、平成22年にANAが丘珠空港から完全撤退しました。

HACの拠点空港化

平成22年にHAC(日本航空グループの北海道エアシステム)が丘珠空港を拠点空港とすることを発表し、全路線を丘珠空港に集約し、格納庫の新設を行いました。

駐機するHAC機

FDAジェット機の季節就航

平成24年になると、FDA(フジドリームエアラインズ)のジェット機(エンブラエル社ERJ170)による丘珠就航を打診し、試験フライトやチャーター便による実証飛行を実施、平成26年から年間13往復のチャーター便を運行、平成28年には定期便として就航となりました。

駐機するFDA機

しかし、1500mの滑走路では冬季間は運行はできず、夏場においても、いわゆるロケットスタートによる離陸を行っています。

TOKの新規就航

令和5年、新潟の新しいリージョナル航空会社であるトキエアが丘珠-新潟線の定期便就航が決定しました。

丘珠空港に駐機するTOK機(試験フライト)

トキエアラインは2022年度中の就航を予定していましたが、準備に時間がかかっており、2023年9月の試験フライトを実施しています。

HAC新規路線の就航

平成5年10月に丘珠-秋田線、丘珠-中標津便線が就航しました。秋田便はJAL新千歳-秋田便からの移管、丘珠-中標津はANAが新千歳-中標津線を運行するなかでの丘珠便の開設となります。

丘珠空港に就航している機材

現在の丘珠空港に就航している機材はHACとTOKがプロペラ機のATR42-600、FDAがジェット機のERJ-175を使用されています。

機体の大きさと座席数をまとめておきます。

丘珠空港に就航している機材の諸元

プロペラ機であるATR42-600はジェット機のERJ-175よりも明らかに小さい機体ですが、ERJ-175はLCCでよく使用される機材A320neoと比べて小さい機体であり座席数も大幅に少ないことがわかります。

※座席数や最短離陸滑走路長は諸条件で違いがありますので参考として考えてください。
※最短離陸滑走路長は公表値です。
※日本においては国土交通省から原則◯◯◯◯メートルの滑走路長の確保が決められています。

滑走路延伸の課題や期待すること

①空港用地に転用される丘珠空港緑地公園の対策

丘珠空港の滑走路を2000mへ延伸するための用地でもある丘珠空港緑地公園ですが、現在ではすっかり市民の憩いの場となっており、すぐ近くに滑走路があることから、着陸する飛行機が頭のすぐ上を飛行するため、小さな子供らに人気の場所となっています。

丘珠空港に着陸するFDA機

現在の滑走路延伸計画では北西側に200m、南東側に100m延伸する案が有力となっており、公開された想定図によると、篠路通の一部が空港用地と重なり、丘珠空港緑地の多くを空港用地に転用する必要があります。

1800m延伸想定図(出典:札幌市-丘珠空港の利活用検討)

また、検討会が発表した資料によると、滑走路北側に小型航空機用のエプロン整備、防災ヘリ・MW用エプロン等整備とあり、丘珠空港緑地が東西に分断される可能性があることが分かりました。

丘珠空港活用案(丘珠空港の利活用に関する検討会議報告書をベースに作成)

丘珠緑地公園の一部を空港用地に転用するのは仕方ありませんが、市民に定着した公園ですので、新たに用地買収して現在と同じ体験をできるようにすることが重要と思われます。

②ボーディングブリッジの検討

丘珠空港のエプロンは5バースありますが、ボーディングブリッジ(搭乗橋)は整備されていません。そのため、飛行機に搭乗するには、空港ターミナルビル2階の保安検査場から1階へ降り、冬季間もエプロンを歩いて飛行機に搭乗しなければなりません。

検討会の資料によると、ボーディングブリッジの整備検討と記されていますが、現在の丘珠空港にはHACやTOKがATR42-600、季節就航のFDAがERJ-175が就航しています。

ATR42-600機とERJ-175機

ATR42-600は乗降口が機体後方の地上から約1.3mの高さのにありますが、丘珠空港ではボーディングスロープも接続せず、エプロンから直接機体ドアと一体化した階段を使って搭乗します。

後方乗降口から搭乗する乗客

ERJ-175の乗降口は機体前方の地上から約2.8mの位置にあるため、タラップ(舷梯)を接続してエプロンから機内へ搭乗します。

FDA機に接続するタラップ

ERJ-175には一般的なボーディングブリッジの接続が可能だと思われますが、ATR42-600は乗降口の地上高が約1.3mと低いため、両方に接続可能なボーディングブリッジ存在するのか気になるところです。

近年他空港でも導入が進むエプロンルーフも候補に上がるかもしれませんが、丘珠空港は市内でも積雪が多い地区であり、また北西の風が強い地区なのでエプロンルーフは不向きかもしれません。

③ターミナルビル施設の拡充

現在の丘珠空港の年間利用者は約32万人ですが、現行の空港ターミナルビルが手狭になっており、朝夕チェックインカウンターはとても混雑しています。

ターミナルビル1Fのチェックインカウンター

丘珠空港のエプロンは旅客機5バース(+小型機22バース)ありますが、ターミナルビルの保安検査場のレーンは1つしかなく、時間帯によってはとても混雑します。

ターミナルビル2Fの保安検査場入口

現在の丘珠空港ターミナルは延べ床面積が約3,500㎡程度の小さいターミナルビルですが、2Fにはレストランや売店があります。

ターミナルビル2Fのレストラン
ターミナルビル2Fにある売店

丘珠空港の滑走路延伸により、1日の発着便は現在の2倍である70便、利用者数は3倍の年間100万人となる見込まれています。

さらに、道外の空港を結ぶ路線が増やす方針であることから、北海道の美味しい食材を提供するレストランや、北海道土産を販売する売店も大幅に拡充すべきであり、空港ターミナルビルを全体を拡張する必要があると考えます。

現在の丘珠空港の年間利用者約32万人ですが、新規路線の就航があった令和5年度は40万人を超えると予想されています。

滑走路延伸後の空港ターミナルはどの程度の規模が妥当なのか、他の空港ターミナルを調べてみました。ちなみに、国際線がある空港や貨物ターミナルを含む空港もあるので参考として考えてください。

■現在の丘珠空港

■年間利用者が約30万人の空港

丘珠空港の年間利用者に近い空港を調べると、佐賀空港の約34万人、山形空港の約30万人が該当します。驚くことに、年間発着数に関しては(丘珠空港は小型機中心ではあるものの)両空港の2倍以上であることがわかりました。

■年間利用者が約100万人の空港

丘珠空港の滑走路延伸後の年間利用者は約100万人と想定されていますが、その100万人に近いの空港を調べてみると、青森空港が約98万人、小松空港の約114万人が該当しました。

これら結果から、滑走路延伸後の丘珠空港ターミナルの規模を想定すると、約8,000~9,000㎡程度が妥当ではないかと考えます。

北海道新幹線が札幌まで開通すると、直行便で道内空港に入国した外国人観光客が丘珠空港を経由して新幹線で道南や本州へ向かうコースも登場すると予想されますので、国際線の就航がなくても外国人観光客が大勢利用する可能性があるかもしれません。

④二次交通の問題

丘珠空港活用検討会の資料では地下鉄延伸や新交通システムも検討候補にありましたか、大方の予想どおり最終案では地下鉄延伸、新交通システムの検討は先送りになりました。

地下鉄と空港ターミナルの連絡(仮定)

地下鉄に関して、栄町駅は現空港ターミナルよりも南側に位置しており、留置線や検車線を考えると大きくUターンするする必要があり、約2.6km(約3駅分)の延伸が必要となってしまいます。仮に1つ手前の新道東駅から支線を建設するなら、約1.4km(約1駅分)の延伸で済むことになります。

地下鉄延伸、新交通システムの検討先送りにより、2次交通については現行通り栄町駅行き、札幌駅行きの空港連絡バスにが中心に議論されていきそうです。

丘珠駐屯地の位置

ただ、この検討先送りについては、空港ターミナルの場所を丘珠駐屯地付近に移転する可能性も含まれていることを期待しています。

現在の丘珠駐屯地に移転した場合、栄町駅から最短で約700m(徒歩6~8分)程度となるので、動く歩道を整備した地下通路を建設して地下鉄駅と空港ターミナルを直結することも不可能ではないと思われます。

もし、空港ターミナル位置が現在の位置から変わらない場合、二次交通となる空港連絡バスを安定して運行させるために、高速道路と空港ターミナル直結を検討する必要があるのではないでしょうか。

高速道路との直結イメージ

現在、札幌では都心アクセス道として、札幌駅-札幌新道区間を結ぶ大半が地下トンネルの自動車道を整備しており、都心方面は高速道路とダイレクトアクセスが可能になります。

丘珠空港の最寄りに伏古ICがありますが、千歳方面への入口と都心方面への出口しかないため、せっかく整備している都心アクセス道を活かすことができません。

札樽自動車道から丘珠空港ターミナルまで全長約850mの丘珠空港線を新設することで、空港連絡バスの定時性確保と時間短縮を実現することができると共に、丘珠空港周囲の幹線道路の混雑防止になると思われます。

直結路線の新設が難しい場合でも、伏古ICをフルICへの改修および、幅員が50m~65mありながら片側2車線しかない伏古・拓北通の4車線区間を片側3車線にすることでも一定の効果があると思われます。

⑤空港北東側整備の促進

丘珠空港北東側一帯は広大な玉ねぎ畑となっています。また、丘珠空港の北東側の主要道路としては明治初期に伏籠川に沿って開通した道道札幌花畔札幌線のみであり、道幅が狭くカーブが連続するにもかかわらず、大型車の通行も多いため安全に通行できるとはいい難い状態です。

現在の丘珠空港周辺の主要道路
緑色:4車線、橙色:2車線

丘珠空港活用案によると、滑走路北東側に小型航空機用のエプロン整備、防災ヘリ・MW(医療ジェット)用エプロン等整備を検討していることが判明しています。また、現在の丘珠空港は貨物取扱がありませんが、滑走路延伸により貨物も取扱うべきと思います。小型機中心の運用となるため積載量は制限されますが、エンブラエル社ではERJ-170など同社リージョナルジェットの客室を貨物室への改修も可能であるとしています。

少子高齢化によりトラック運転手の確保が困難になりつつある中、丘珠空港でも貨物を取り扱い、丘珠空港北側に物流倉庫や食品加工工場を中心とした大規模な工業団地を造成してはどうでしょうか。

滑走路延伸後の丘珠空港周辺主要道路(提案)
灰色:都市計画道路廃止区間、赤色:新規整備道路(4車線)

滑走路の北東側に整備される予定の小型航空機用のエプロン整備、防災ヘリ・MW(医療ジェット)用エプロンや、新たに整備する工業団地のため、丘珠空港の北側と北東に新たな4車線道路を整備します。

また、滑走路延伸により北東側丘珠空港緑地公園が縮小されることから、冬季間の吹きだまりにで通行止め増加が懸念される丘珠空港緑地公園内を貫通する苗穂・丘珠通(道道花畔札幌線)を伏籠川の東側に付替えます。これにより、将来的に滑走路が2000mに延伸されても道路の付替えは不要となる想定です。

まとめ

地域説明会の議事録を読んでみましたが、反対意見もあるものの地元住民から歓迎の声もあり、むしろ2000mへ延伸してLCCで使われる中型ジェット機も就航できるようにすべきという声までありました。

YS-11の時代は風向きによっては元町付近でもプロペラ騒音が聞こえたそうですが、航空機の技術が格段に進歩した現在はプロペラ騒音が聞こえることはないとのことです。

FDAのジェット機については離着陸で低高度を飛行する際はジェット騒音が気になるものの、時間にして数十秒程度なので、防音対策を行うことでクリアできるものと思われます。

ここ数年で丘珠空港の年間利用者増が続いており、2024年には空港ターミナルの搭乗待合室の拡張、売店移設工事が行われます。また、昨年まで冬季間は運休していた丘珠空港-札幌駅便も利用者増により、2023年冬から通年運行となることが決定しました。

地下鉄延伸や新交通システムの導入検討は先送りされ、2次交通としては現在と同じくバス輸送を中心として検討されていくと思われますが、老朽化している陸上自衛隊丘珠駐屯地の移転と空港ターミナル移設がセットで検討されることを望みます。

滑走路延伸を契機に貨物の取り扱い、丘珠空港の北東側に工業団地を建設することもぜひ検討してほしいと思います。

丘珠空港の滑走路延伸により国際線の就航を目指すというような動きはありませんが、日本では未就航のエアバス社A220-300は1800mの滑走路で離着陸が可能であり、航続距離が約6400kmということからアジアの主要都市と丘珠直行便を就航させることも可能です。

航空機技術の進歩により更に丘珠空港の可能性が広がっていきそうです。

※地図は地理院地図Vectorを使用しています。